役者人生20年、プライベートでは3児の父親の顔を持つ俳優・金子昇さん。
「仕事ができる喜び」を改めて実感しているという今、8月上演予定の舞台『スケリグ』に臨む意気込みと、ご自身の健康観についてお話を伺いました。
1998年、イギリスの作家デイヴィッド・アーモンドが書いた児童文学。翼の生えた奇妙なスケリグと、少年・マイケルの出会いから始まる物語は、ファンタジックな世界観を背景に人の心の温かさを切なくも優しく描くハートフルな作品である。
今回は、全国ツアーもありスケールも大きく、キャストも一部新たに加わります。初演よりも、さらに見ごたえのある舞台に仕上げたいですね。
そして何より、今は世の中のエンターテイメントが再び動き始めたタイミング。“仕事ができる幸福感”をこれほど強く感じたことはありません。この喜びを噛み締めながら、本舞台に臨みたいと思っています。
去年の『スケリグ』の公演では、出演者1人あたり5役以上ものキャラクターを演じました。場面ごとに演者の異なる表情が楽しめるという点は、見どころの一つです。
僕がメインで演じるのは、少年・マイケルの父親役。根は心優しい父親なんだけど、観ているお客さんにはどこかミステリアスな雰囲気を感じさせるキャラクターです。幻想的なストーリーに、ハラハラ・ドキドキといったサスペンス要素を含ませられたらな…と(笑)。
舞台に映画、ライブと多くの娯楽文化が失われた2ヵ月間だったと思います。当たり前に楽しめたものが、当たり前に楽しめなくなっている————もちろん、『スケリグ』もそういった緊迫感が残る中での公演になるでしょう。僕自身、本番が楽しみである反面、不安な気持ちも大きいのが事実です。
でも、だからこそ「誰も経験したことがない」作品になると思っていて。リアルの空間で演劇を楽しむのが貴重になった今、演じる側の心構えはもちろん、お客さんが作品を観てどう感じるかも変わるはず。この作品が、演劇界の新たな一歩に繋がると信じています。
普段なら、仕事で国内や海外に行くことが多いのですが、この2ヵ月間はひたすら巣籠り。人生で一番長く家にいた時期かもしれません。でもそのおかげで、家族とはかなり濃密な時間を過ごせました。子どもたちとの会話は一切途絶えなかったし、それまで妻に任せっきりだった料理も代わることができたので。些細なことだけど、僕にとってはそれがとても楽しい思い出になったかな。
そうですね。最近作ったもので言えば、手作りのドレッシング。ネット検索で出てきたいくつかのレシピを参考にして、ちょっとずつ色々な具材を足していったら美味しく仕上がりました。
僕は栄養士ではないので、正直そこまで細かいことは考えません。ただ、材料の数は気にしていますね。ドレッシングにしても、ニンジン、タマネギ、ニンニク…その他にもたくさん材料を使って、全部で10品目ほど入れました。それをさらにキャベツやレタスなんかの葉物野菜にかけて食べるわけだから、当然栄養は摂れるよね!…っていう(笑)。専門的な知識は無くとも、絶対に健康に良いだろうなって思いながら自己流で作っています。
売り物と違って、添加物が入っていないっていうだけでも健康には良いですから。
今回の自粛生活で改めて気づかされたんですけど、僕たち役者って、仕事をしていなかったら何者でもない。俳優といえど、家にいるだけだったら“だたのオジサン”なんです(笑)。これまでいかに「役に生かされてきたか」ってことを、ひしひしと感じましたね。
だから、これからは役に依存することなく演技ができたらいいなって。“金子昇”に求められるキャラクターやイメージを一度全部無視して、あえてその「真逆」のことをやってみる。もちろん怒られることはあるかもしれないですが、そうした先に演出家や共演者の方との新たな化学反応が生まれると思っています。
最近、自分自身にも言い聞かせていることですが、「周りに合わせよう」と考える必要はないと思っていて。何でも、自分のしたいことをマイペースに進めるのが良いと思います。
健康についても、気にしすぎないこと。食べたいものは我慢せずに食べる!(笑) 常に楽しく、幸せでいられることが一番ですから。ただ、その分しっかり運動したり、体を労わる意識をバランスよく持てたら良いですよね。
東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
8~9月 全国ツアー
作:デイヴィッド・アーモンド
翻訳:浦辺千鶴
演出:ウォーリー木下
出演:
浜中文一・大東立樹(ジャニーズJr.) 清水らら
奥村佳恵 工藤広夢・金子昇 瀬戸カトリーヌ
吉田能(演奏)
企画・製作:シーエイティプロデュース
公式サイト:https://skellig.jp