良きパパから猟奇的な殺人鬼まで、どんなジャンルの役柄にも溶け込んで惹きつける人気俳優・阿部サダヲさんにインタビュー。主演を務める舞台『ツダマンの世界』では、初の試みである小説家役を演じます。映画、舞台、テレビなど多方面で引っ張りだこの活躍ぶりを支える、ご自身の健康観にも迫りました。
ヘアメイク/中山知美 スタイリスト/チヨ(コラソン) 撮影/梁瀬玉実
1970年4月23日、千葉県生まれ。1992年より大人計画に参加。同年、舞台『冬の皮』でデビュー。以降大人計画の舞台以外にも、『シダの群れ』『髑髏城の七人 season鳥』などに主演。18 年に映画『彼女がその名を知らない鳥たち』にてブルーリボン賞主演男優賞、22年にNODA・MAP番外公演『THE BEE』にて読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』、映画『死刑にいたる病』など、多くの話題作に主演。
松尾スズキ2年ぶりの新作‼ 小説家ツダマンをめぐる 狂気のメロドラマ
小説家・津田万治(阿部サダヲ)家の女中・オシダホキ(江口のりこ)や、縁ある人々からの視点で振り返る、津田万治=ツダマンの半生。生まれてすぐ母と離れ離れ になり、十歳で父が他界。義母からいびられて何かと反省文を書かされたことが彼ののちの文章力につながっていく。
地味に小説を書き続ける中、ようやく新作が文壇最高峰の候補作に。それを機に、幼なじみの大名狂児(皆川猿時)が薦める戦争未亡人の数(吉田羊)と結婚することとなる。だが万治には、劇団の女優である神林房枝(笠松はる)という愛人がいた。また、弟子になりたいと佐賀の豪商の三男坊、長谷川葉蔵(間宮祥太朗)が現れ、彼のそばには常に世話係で番頭の強張一三(村杉蝉之介)の姿もある。そこに葉蔵と関係を持とうとする謎の文学少女、兼持栄恵(見上愛)なども現れ、万治と数と葉蔵を取り巻く人間たちの愛憎関係は、複雑に絡み合っていく……。
ちょうど昨日読んだのですが、半分くらい理解できていません(笑)。やっぱり、毎回思うけど松尾さん(松尾スズキ)はさすがだなって。特に今回は時代背景がちゃんとしていて、その中で戦争の話が出てくるのも松尾さんの舞台では珍しいですね。舞台をどうやって使うのかも本当に分からない。劇場3つ必要じゃない!? ていう規模感。稽古が始まって謎が解けていくのが楽しみです。
小説家を演じるのは初めてですね。昔の小説家とか文豪って、「変わっている人」のイメージありませんか? 心中したがったり、薬飲んじゃったり、愛人がいるような…それこそ今の時代ではできない、コンプライアンス的にNGな人が多かったと思う。ツダマンは、その変わったイメージの代表みたいな人で、周りもそんな人ばっかり。人間関係がすごく密で、色んな事情が重なっているところが面白いです。
不気味な空洞? 松尾さんのことですか? あ、ツダマンのことですね(笑)。不気味な空洞かぁ・・・何を考えているのか分からないからですかね、ツダマンって人が。人に振り回されるし、でも自分は小説家っていう箔が欲しいという。
間宮さんは好きな役者で、共演したいと思っていたのですごく楽しみです。彼が出演しているテレビ番組を見て「あ、こういう人なんだ」っていうのは事前に押さえてあります(笑)。
彼は葉蔵さんっていう弟子の役だけど、これがまた面倒くさい役柄で…。この人も、死にたがりだけど、死なない。みたいな、昔の小説家っぽいですよね。…僕、昔の小説家に対する偏見が強めですね(笑)。
人間の表に出ないような、嫌な部分や弱いところが見え隠れするんですけど、それを笑いに変換するのが松尾作品の面白いところです。詩みたいなセリフも魅力的なので、ぜひ注目してほしいです。冒頭にも言ったように、よく分からない部分は結構ありますけどね。何でそこで奇声を発するの!? とか。
最近は演出面にさらに磨きがかかっているように思えます。『ツダマンの世界』でも、歌とか振り付けの要素があるみたいで。松尾さんならではの演出が楽しめると思います。
えー! 作曲もするんだ…凄い。どんどん凄くなっていますね! あぁ楽しみ。稽古場では、松尾さんの理想に近づくために心がけていますけど、あの人本当に「空飛べ」とか「下からまぶたを閉じろ」とか言うんですよね。そうなれたら良いな、とは思いながらやってますけどね(笑)。
50代になってから、健康診断の数値を気にするようになりました。今年、初めて血圧計も買って、朝起きたときに測るのが日課です。この仕事を長くやっていきたいから、動けるようにはしておきたいですね。
ありがとうございます(笑)。実は僕、女優になりたくて。共演する女優さんに「美」について聞くのが最近のマイブームで、おすすめのものを取り入れています(笑)。男性も美意識が高まっている時代だと思うんですよね。
60代になった周りの先輩方がみなさん元気なので、見習おうと思っています。60代以降って、疲れた時期を越えてまた一段上がっていくイメージがある。エネルギッシュで良いですよね。
先のことを計画して、楽しみをつくるのも大切にしたいです。今年とか来年にやりたいことをよく考えています。北海道とか、旅行も行きたいけどなかなか行けないので、家には旅行ガイドブックばっかり増えていきます。行けなくても考えるだけで、少し気持ちが上がりますよね。
【東京公演】 2022年11月23日(水・祝)~12月18日(日) Bunkamuraシアターコクーン
【京都公演】 2022年12月23日(金)~12月29日(木) ロームシアター京都メインホール
【作・演出】松尾スズキ
【出演】阿部サダヲ 間宮祥太朗 江口のりこ 村杉蝉之介 笠松はる 見上愛 皆川猿時 吉田羊 ほか
【お問合せ】キョードーインフォメーション 0570‐200‐888(11:00~18:00/日曜・祝日は休業)
【主催】読売テレビ/サンライズプロモーション大阪
【共催】ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)
【企画・製作】Bunkamura