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俳優 上川隆也さんインタビュー(2023年6月25日掲載)

抜群の演技力でその名を轟(とどろ)かせ、テレビや映画を始め多くのメディアに出演されている俳優の上川隆也さん。今回挑戦される黒澤明監督の名作『隠し砦の三悪人』では、上品な佇まいからは想像できないほどの運動量と、周りを魅了する美声を存分に披露されることに期待が高まります。



撮影/牧野健人

~上川隆也さんプロフィール

1965年5月7日生まれ、東京都出身。1995年にテレビドラマ「大地の子」(NHK)の主役・陸一心に抜擢され、一躍その名前と顔が全国に知られるようになる。1997 年公開の映画「東京夜曲」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。大河ドラマ「功名が辻」(2006・NHK)や連続ドラマ「遺留捜査シリーズ」(2011-2022・テレビ朝日系)など数々のドラマや映画で主演をし、舞台においても第18回読売演劇大賞優秀主演男優賞を受賞した『ヘンリー六世』(2010)や『魔界転生』(2018・2021)など多くの話題作で主演をしている。さらに俳優として多方面で活動するかたわら、アニメ「天元突破グレンラガン」(2007・テレビ東京系)や映画「かぐや姫の物語」(2013)など声優やナレーションとしても様々な作品に出演。

抜群の演技力でその名を轟(とどろ)かせ、テレビや映画を始め多くのメディアに出演されている俳優の上川隆也さん。今回挑戦される黒澤明監督の名作『隠し砦の三悪人』では、上品な佇まいからは想像できないほどの運動量と、周りを魅了する美声を存分に披露されることに期待が高まります。

舞台『隠し砦の三悪人』~あらすじ~

 時は戦国時代、とある場所で秋月、山名という小国の戦いが起こる。山名家当主である山名竹膳(佐藤アツヒロ)は長年膠着していた秋月家との戦いを、不意打ちのような奇襲で一気に攻め込んで片を付けた。百姓の又七(風間俊介)と太平(六角精児)は一攫千金を夢見て戦いに参加するも、恐怖に震え上がり何もできない。命が惜しくなった 2 人は故郷に帰ろうという話になるが、欲に目がくらみ討ち死にした兵士の懐漁りをはじめると、秋月の隠し金を見つける。争い合うように隠し金確保に励む又七と太平の前に、怪しげな男が現れる。その正体は秋月家の侍大将・真壁六郎太(上川隆也) であった。
 同盟国への脱出を思案していた六郎太であったが、又七と太平が口にした脱出法に活路を見出す。三人で向かった隠し砦には、身分を隠して潜む秋月家の雪姫(小林由依)の姿があった。仔細は分からないが、とりあえずの恩賞欲しさに手伝うことになる2人。しかし、行く手には六郎太のかつての盟友にして宿敵である山名の侍大将・田所兵衛(宇梶剛士)が立ちふさがる。
 果たして 4 人は敵陣を突破し、無事に脱出できるのか…。

黒澤明監督の娯楽時代劇として名高い『隠し砦の三悪人』。初の試みである舞台化に際して、上川さんの役柄と作品の見どころを教えてください。

 僕が演じる「真壁六郎太」という役は、戦に敗れてしまった国の侍です。その侍がお姫様を守りながら、自国の存続のために敵地から逃れるといった物語なのですが、道中にさまざまなピンチが押し寄せてくる中を、数少ない手駒や知恵でくぐり抜けていく娯楽時代劇です。物語のすべてが見どころと言っても過言ではありません。
僕が説明を申し上げるのも口幅ったいのですが、半世紀を超えても傑作の呼び声高く評価されている作品でもありますし、それを今回は恐れ多くも舞台化するといった試みだけに、見に来て下さる皆様に楽しんでいただけるよう精一杯努力したいと思います。

時代劇を演じるにあたり、普段のお仕事に比べて意識している点はありますか。

 時代劇のキャラクターと現代の人物を演じ分けることはしていないんです。もちろん使っている言葉や文化、身の回りの物や衣服、所作などは時代によって描かれ様が違うと思いますけど、昔でも現代でも、いつの時代も人は嬉しいときに笑い、悲しいときは泣いて、辛い食物は辛いし甘いものは甘い。そこに差が無い限り、僕は演じることで時代劇と現代劇を分ける必要は無いと思っています。ただ、その時代や風景など描かれるキャンバスとも言っていい土台に対し、どのように表現していくかはしっかりと意識すべきだと思います。

戦国時代が舞台ということで、立ち回りなど運動量も多くなりそうですね。例えばチャンバラで観客が沸くのも舞台の魅力の一つだと思いますが、他にも演劇だからこそ感じられる、テレビとは違った面白みとは?

 この仕事を何年もやっていて思うことですが、やはり演者がお客様を、お客様が演者を「目のあたりにしている」ことだと思います。演者が吐く息や流す汗にいたるまで、その場で直に感じていただけることによって、テレビや映画といったほかの媒体では体感しにくい臨場感や没入感を味わっていただける。それが演劇というエンターテイメントが持っている、とても大きな魅力の一つです。

実際舞台で演じられているとき、観覧席のお客様のリアクションが気になることはありますか。

 気になるというよりは「助けていただいている」と強く感じています。さまざまなシーンをお届けする中で、投げ返してもらえるリアクションや笑い声、息をのむ気配や最後のカーテンコールの拍手まで、コンサートのコールアンドレスポンスほど明確ではないですけど、それは確実に僕らとお客様の間で行われているやり取りです。そのやり取りは演者に間違いなく影響しますし、一つ一つのシーンをともに作り上げていると感じます。お客様が劇場にお越しくださり、目の前の物語を楽しんでいただくことで舞台は完成するんだと思います。

舞台のほかにも、ドラマや映画とご多忙な上川さんですが、お体のケアで気をつけていることとは?

 幸い、あまり体は壊れないほうです。声もほとんど潰れたことがなくて。でも、だからこそ一定の健康状態を保ち続けたいと思います。自分を過信せずに、己をどこかで危ぶんでいたいとも思っています。

テレビで拝見するよりもさらにお声が通ってらっしゃって、美しいです。

 うるさいですか(笑)? この声量が、一番楽な発声かもしれません。己では何とも申し上げようがないですけど。

耳に心地よいです。舞台では、上川さんの美声でより一層臨場感が増し、その時々のシーンに乗って響き渡るのが想像できます。

 そう言っていただけるのは嬉しいです。席が一番前列のお客様と最後列のお客様では舞台の見え方が変わるのが劇場の宿命でもありますが、とはいえ声に限っては均等にお客様へお届けできるものだと思うので、表現したいことや伝えるべきものを声に乗せて、お届けしたいと思っています。

劇場でこそ味わえる体験が待っているということですね。最後に、上川さんが生活において大切にしていることがあれば教えてください。

 僕はルールとか、「決め込んでしまう」というのがあまり得意ではないみたいです。例えば日常生活で気を付けているのは朝食を食べることくらいなのですが、メニューが和食の日もあればパンやパスタになる日も当たり前にあります。「和食じゃなきゃダメ」と決めたり、ルール化するとどこか苦しくなってしまう。いわゆる、生活において「選べる余地」が残っているかどうかが、大事。その方が仕事や生活において良い状態を保てていると感じます。

【東京公演】2023年7月28日(金)~8月13日(日)明治座
【大阪公演】2023年8月24日(木)~8月27日(日)新歌舞伎座

【原作】
 黒澤明 橋本忍 小國英雄 菊島隆三

【上演台本・演出】
 横内謙介

【出演】
 上川隆也 風間俊介 六角精児 小林由依(櫻坂46) 
  佐藤アツヒロ 宇梶剛士 ほか

【公演に関するお問い合わせ】
 東京公演:明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00~17:00)
 大阪公演:新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)

☆東京公演 チケット販売日
 7月2日(日)10:00~
 ※お電話もしくは明治座公式ホームページよりご購入下さい。

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