よく通る美しい声と圧倒的な演技力で、『それいけ!アンパンマン』をはじめとした数々の作品に声優として携わり、今では俳優としても一線で活躍している戸田恵子さん。60代を迎えた今でも新たな挑戦をし続けています。明るくてチャーミングな戸田さんに、今回出演される舞台の魅力や、ご自身の役者観・健康観についておたずねしました。
1957年9月12日生まれ、愛知県出身。NHK名古屋放送児童劇団に小学5年生から在籍し、ドラマ『中学生群像』(『中学生日記』の前身)で俳優デビュー。79年、アニメ『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で本格的に声優としての活動をスタート。以降、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(三作目)鬼太郎役、『キャッツ・アイ』来生瞳役、『きかんしゃトーマス』トーマス役、『それいけ!アンパンマン』アンパンマン役などの声で人気を集める。俳優として、『ショムニ』シリーズ、ドラマ『遺留捜査』シリーズ、NHK大河ドラマ『新選組!』(04年)、NHK連続テレビ小説『純情きらり』(06年)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(19年)、ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』(23年)映画『湯道』(23年)、などに出演。97年公開の映画『ラヂオの時間』で『第21回日本アカデミー賞』優秀助演女優賞を受賞。 寒い2月のニューヨーク。古いアパートの最上階に新婚のポール・ブラッター(加藤和樹)とコリー・ブラッター(高田夏帆)が引っ越してきた。工事に来た電話会社の男(福本伸一)も息切れして話せないほどの階段。 エレベーターはなく、天窓には穴があき、暖房も壊れ、家具も届いていない。夜には雪が降るらしい。アパートには不思議な住人がたくさん住んでいる。その中のひとり、屋根裏部屋に住むヴィクター・ヴェラスコ(松尾貴史)はブラッター家の窓を通って自分の部屋に行く。コリーはここでの生活をすごく気に入り楽しんでいるが、真面目な弁護士のポールはこのアパートに馴染めずにいた。 再演が決まるということは初演がとても評価を得たからだと、大概の方は思われますが、私自身、実は再演がそんなに好きではありません。一つには、初演の何も無いところから作品をつくる楽しさが大好きということ、もう一つは再演って初演より面白く無かったら酷評を受けるみたいな、初演より良くて当たり前と思われがちなところがあるので、役者としてハードルが高く、結構プレッシャーは感じます。その上で挑戦することにしんどいなと感じる部分もありますが、前回の初演時はちょうどコロナ禍だったこともありマイナス要素も多かったので、今回はそのリベンジというか。また何よりもニール・サイモンという大変すばらしい劇作家の作品かつ、40年以上前に携わったことがある思い出深い作品でもあるので、再トライするにはうってつけの作品だなと思います。 すごく窮屈でしたね。もちろん舞台上で思いっきり、楽しんでやれた感覚はありましたけど、コロナ禍っていう何か吹っ切れない、生き苦しい感じの中で常にパフォーマンスしているような、詰まる感覚はありました。今回はそういった「やりにくさ」が取り払われて本来の形で挑戦できるので、初演よりもおおらかに取り組めそうです! 作中ではとても保守的に映るのですが、根っこの部分はとても前向きな人だと思います。奔放に生きている娘をすごく心配していて注意ばかりしてきたけど、いざ自分が何か殻を破って一歩踏み出すときは逆に娘から勇気をもらうんですよね。 人生が長すぎて思い出せないことがほとんどだけど…(笑)演出家の三谷幸喜さんの作品に出させてもらったときでしょうか。三谷さんは私の想像を絶することをよく言ってくださるので、自分でも知らなかった隙間のような引き出しが開くんですよ。引き出しがたくさんある方は素晴らしいし、もちろん私もこれまでの役者人生で持っていたつもりだったけど、「まだ開くか!?」って期待できて新しい景色を見せてくれるのが三谷さんのすごさです。まだこの歳でも成長できる! と思うと面白くて、やりたくて仕方がなくなります。自分の伸びしろにワクワクできるところが、この仕事の面白いところかもしれません。 共通点は無いです(笑)。私は途中で面倒くさがってどうでもいいやってなる部分があるので、バンクス夫人はすごく離れたところにいる人だと思う。だからこそ演じるのが楽しいです。 私はほかの役者さんが言うような演技プランとか考えたこともないですし、全然熱心じゃないんです。強いていうなら、演じる役柄のことやバックボーンに思いをめぐらせることでしょうか。例えばカメラマンの役であれば多少カメラについて勉強しますし、誕生日は何月かな、どんな家に住んでいるのかなと、自分の感性を使って日頃の暮らしを想像するのはとても楽しいですね。特に今回は海外の作品なので、リアリティは追求していきたいです。バンクス夫人は毎日どんなものを食べて…とリアルな日常を演じないと、噓っぽくなっちゃいそうだから。そういった日常を切り取って皆さんにお見せすることが、私の役作りなのかなと思います。 60歳を過ぎてから、やっぱり体のことはすごく気にしています。ありがたいことに、見た目が元気そうに映っているようで(笑)。お仕事を引き受けた時点で、倒れられない、風邪も引けない、とにかく体調は維持しなきゃと思います。健康でこれといった特別なことはしていませんが、稽古~公演中はお仕事が終わったらすぐに家に帰って静かにじっとしているとか、多少付き合いが悪くなっても徹底しています。その面でいうと50代のときよりストイックかな。やっぱり舞台で恥をかきたくないし、失敗したくないですから。 納豆です! ジムのインストラクターさんがおすすめしてくれたことがきっかけで、納豆はすごく食べるようにしています。やっぱりタンパク質は大事みたいですね。私はパンとかご飯とか炭水化物が大好きなんだけど、タンパク質をとる! と頭で言い聞かせてとるようにしています。今回は地方公演もたくさんあるので、納豆を食べて頑張りたいと思います!
【東京公演】 2024年11月8日~19日(銀座 博品館劇場) 【出演】 【作】 【翻訳】 【演出】
ヘアメイク/相場広美(MARVEE)
スタイリング/江島モモ
撮影/牧野健人~戸田恵子さんプロフィール~
舞台「裸足で散歩」~あらすじ~
ある日コリーは、母であるバンクス夫人(戸田恵子)との食事にヴェラスコを誘い、食事を楽しんだ。 だが、みんなが帰った後、2人きりになったポールとコリーはケンカし始めてしまう…
ポールとコリーの新婚生活はどうなってしまうのか?ニール・サイモンの傑作コメディ『裸足で散歩』が2年ぶりに帰ってきました!
コロナ禍で行われた初演を振り返ってみて、当時は「やりにくさ」もあったのでは。
戸田さんが演じる「バンクス夫人」について教えてください。
人間の性格って、例え劇的なことがあってもそうそう変わらないと思うので、バンクス夫人はじめ登場人物が何か殻を破って、低い階段を上り続けてちょっとずつ成長していく姿が魅力的に映ると思いますし、優しい物語になっていると思います。「殻を破る」というお話がありましたが、戸田さん自身がこれまでの人生で殻を破った経験はありますか。
保守的なバンクス夫人に対して、戸田さんが共通点を感じる部分とは。
これまでも役者だけでなく声優業など、数々の役を演じてきた戸田さん流の「役作り」が知りたいです。
いくつになっても挑戦し続ける、戸田さんのエネルギーには圧巻です。健康で気をつけていることはありますか?
ありがとうございます。最後に、おすすめの「元気飯」があれば教えてください。
ほか全国16都市で公演
加藤和樹
高田夏帆
福本伸一
松尾貴史
戸田恵子
ニール・サイモン
福田響志
元吉庸泰