年齢を重ね、より幅広い役に挑戦している俳優・加藤雅也さん。1月25日に公開された映画『二階堂家物語』では跡継ぎ問題に悩む主人公・辰也を演じています。映画の見どころとご自身の健康への思いについてお伺いしました
撮影/安友康博 ヘアメイク:結城春香 スタイリスト:木村レイコ(COMRADE)
娘しかいない名家の家督相続のお話ですが、単に跡継ぎをどうするかの話ではありません。自分が存在する上で、親や家との関わりは切っても切り離せませんが、だからこそいろんな葛藤が生まれる。親の面倒を誰が見るのかとか、親の財産をどうするのかなどにも置き換えられる、家族の問題を描いた映画です。また、自分の立場と本音のはざまで、どう行動していくかを描いた映画でもあります。
出演シーンが多いため、毎日撮影でとても大変でした(笑)。これまで毎日撮影があることはほとんどなかったので、改めて映画を作るのはとても大変だなと思いました。
通常の撮影で大変なのは食事なんです。ロケ弁が中心になり、どうしても脂っこいものが多く、体調管理が難しくなりがちです。ですが、今回の撮影では奈良県・天理市の市民の皆さんに全面的に支援いただき、温かい食事を出してもらったので体調を気にすることもなく助かりました。
昔は撮影が終わった後、ワイワイみんなで食事に行ったりしましたが、今は極力余計なことはせず、早く寝て次の撮影に備えることが多くなってきました(笑)。午前中の撮影がなくても、どこかに出て行くよりも撮影に備えるようにして、万全の体調で撮影に臨むようにしています。
私の妻は医者なので、いろんな情報を教えてもらっています。例えば、野菜から食べた方がいい理由に関しても、体の中でどうなるからいいのかを学術的に教えてくれるのでとても説得力があります。だからすんなり情報が入ってきて、それを実践してみようとなります。
ただ、あまり食事を気にしすぎてストレスを溜めてしまっては逆に不健康になるし、我慢ばかりの人生で本当にいいのかとも思います。運動をするにしても同じで、「毎日2時間スポーツジムに行く」と自分に課して、それがストレスになってしまっては元も子もありません。
人生も折り返し地点を過ぎて思うことは、やはり楽しまなければ損だということ。健康のためにストイックになってそれで長生きをしても、それは違うと思う。目的と手段が逆になってしまっている。1回きりの人生なので楽しむということが目的で、その手段として健康であり続けることを考えなければならないんじゃないかな。
次の作品の台本を読んだり、その作品について考えることが一番楽しいですね。こういうと仕事が大好きなんだと思われがちですが、次に演じるキャラクターはこうなのかなと思いを巡らす時間が楽しいのであって、実際撮影になると大変なことが多い(笑)。あとは、やはり娘など家族といる時間が楽しいですね。
新しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。「あれはやらない」「こういうのはやらない」などと決めつけずに、まずはやってみる。そしてやってみてから考えるというスタンスでいきたいなと考えています。今の自分だとそれは演じるという範疇なのかもしれませんが、また何年かすれば「こっちの方が面白い」と思って全く違うことをしているかもしれない。それも楽しみです。
健康面で言うと、80歳、90歳になっても自分の足で立って生活していきたい。寝たきりの生活になってしまうと、妻や娘など周りに迷惑をかけてしまう。それは自分のポリシーに反してしまう。自分で歩いて人に迷惑をかけず生活し続けるために、今のうちから健康に気を付けていかなければならないと思っています。
人生の大先輩に言う言葉としては偉そうに聞こえるかもしれませんが、結局、健康な生活が続けられるかどうかは自分次第だと思います。お医者さまは健康になるための手助けをしてくれますが、あくまでサポート。映画『ボディーガード』のなかのセリフで「僕はいくらでも守れるけれども、守られる側にも守られる意識がないと守りきれない」と言う場面がありましたが、それと同じで健康になろうという意識や努力がないとダメだと思います。健康になるための努力はしつつ、かといって健康でいることに神経質になることもなく、バランスをとりながら人生を楽しんでいただければと思います。
出演:加藤雅也、石橋静河、町田啓太、田中要次、白川和子、陽月華、伊勢佳世
監督:アイダ・パナハンデ(イラン)
エグゼクティブ・プロデューサー:河瀨直美
脚本:アイダ・パナハンデ、アーサラン・アミリ
配給:HIGH BROW CINEMA