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俳優 中井貴一さんインタビュー(2019年8月25日掲載)

デビューから38年、今なお俳優業の第一線で活躍し続けている中井貴一さん。9月13日公開・三谷幸喜監督の最新作『記憶にございません!』では、主人公の総理大臣・黒田啓介役をコミカルに演じます。役作りに対する意識や舞台裏のエピソード、さらには独自の健康法についてお話を伺いました。

撮影/安友康博 ヘアメイク/藤井俊二

デビューから38年、今なお俳優業の第一線で活躍し続けている中井貴一さん。9月13日公開・三谷幸喜監督の最新作『記憶にございません!』では、主人公の総理大臣・黒田啓介役をコミカルに演じます。役作りに対する意識や舞台裏のエピソード、さらには独自の健康法についてお話を伺いました。

今回ご出演される『記憶にございません!』のストーリーを教えてください。

記憶喪失によって嫌われ者の総理大臣から善良な普通のおじさんになった黒田啓介が、政治知識も国民からの信頼も“ゼロ”の状態から真摯に政治と向き合う姿を描いたコメディ映画です。
最近だと参議院選が行われたり、日本の外交関係などが注目されている中での公開ですが、特に深い意味はありません(笑)。シンプルに“おもしろさ”が詰まった作品に仕上がっています。

撮影で印象的だったシーンはありますか?

38度の炎天下の日に、ぎゅうぎゅう詰めの車内で撮った梶原善さんとの掛け合いは印象的です。お互い車のシートを汗でビッショリにしながら演じました (笑)。
三谷監督は「このシーンはワンカット(※)でいこう!」と予告なしに言い出すことがよくあるんですが、あのシーンも突如ワンカットでの撮影が決まったんです。そういった意味では、緊張感のある白熱した演技になったのではないでしょうか。
(※編集によるカット割りをせず、ひとつなぎで撮影する技法)

ワンカットだからこそ生まれるアドリブもあるのでしょうか?

アドリブを効かせることは、ほとんどありません。僕にとってアドリブというのは、「何か面白いことをしてやろう」と考えることではなく、ワンシーン・ワンカットの瞬間を“生きること”。
例えば、演技中には突然モノが落ちることもあるし、相手の唾がかかることもある。僕は、そのような偶発的な物事が起きた時に、常に対応できるように感情を自由にしておかねばならないと考えています。その瞬間を生きていれば、当然モノが落ちれば驚くし、唾がかかれば「汚ねぇな!」と怒りますからね(笑)。僕の場合、そういった意識が自然と“アドリブ感”を生み出しているのかもしれません。

今回、総理大臣を演じられましたが、中井さんにとって「理想のリーダー像」とは?

政界に限らず会社にも言えることだと思いますが、やっぱり“人間力”のある人でしょうか。頂点に立つ人は、「この人のためなら!」と、周りに愛される存在であるべきだと思います。個人の能力が高くても、「隙あらば社長の座を…」と思惑を持った部下がたくさんいる会社は、成功しませんから。
だから、今回の黒田総理を演じるときも、常に“人間味はあるか”を意識しながら撮影に臨みました。

デビューから38年を迎える中井さん。日々の体調管理で気をつけていることはありますか?

“通常”を心がけることです。例えば体重にしても、常に自分の通常を保っていないと、昔みたいに役柄に合わせて減量するのが難しくなるんです。年齢とともに代謝も落ちますし。
だから、自炊は結構しています。料理することはそこまで好きではないし、しないで済むならしたくないですよ(笑)。ただ、外食だと圧倒的に炭水化物が多くなるでしょ。そこで、炭水化物を控えようって考えると、自炊が一番効率的なんです。
家では、お肉などのたんぱく質とサラダを中心に食べています。食べる量に合わせて作る量を自分で調節できるのも、自炊の良いところですよね。

食材にもこだわっているのでしょうか?

よくある、オーガニックなものだけ!みたいなこだわりは一切ありませんね。例えば、糖尿病や痛風になったら、その病気を治すための食事を意識すると思いますが、僕は運よくこれまで一度も大きな病気をしたことがありません。ただ、普段から「病気にならないためにどうするべきか」というのは考えますよ。
僕にとって一番大事なのは、心からおいしいと思って食べること。それは贅沢なものを食べるってことじゃないんです。自分が作った料理でも、いかに「おいしいなぁ~!」と思って食べられるか。そういった“贅沢な心”を持つことが大切だと思いますね。

俳優として、今後の目標はありますか?

僕は常に「今をどう生きるか」を考えて、ただまっすぐ目の前の仕事に取り組んできましたから、今後もそう生きていけたらと思っています。
俳優の仕事って、作品が変わるたび自分もゼロからのスタートになるんですよ。キャリアの積み重ねで自信がつくことは一切なくて、常に“経験したことのない新しい仕事”をしている感覚。この業界に38年いる僕でも、未だに新しい作品の撮影日前は不安で眠れないし、撮影に入ってからもずっと反省と葛藤の繰り返し。そういう意味では、マンネリ化することのない楽しい商売なのかな(笑)。
だから、逆にそういった緊張感が持てなくなったときが、僕の“退き際”なのでしょう。そのときが来るまでは、目の前の仕事にただ全力で臨んでいくだけですね。

最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

“人生100年時代”って言いますけど、僕は人生を数字として見るのではなく、「元気でいる時間をいかに長くするか」のほうが大事だと思う。健康と元気は、僕にとって別のもの。健康は、健康診断などで見る“数値”のことで、元気っていうのは、人の“気力”を意味すると思っています。
だから、「健康でも元気がない人」はいるし、逆に「健康じゃないけど元気な人」もたくさんいる。どっちも両立していることがベストではあるんだけど、人生を生きるうえでは、元気でいることの方が大事なんじゃないかな。「数値が悪いから海外旅行やめときます」じゃなくて、「数値にちょっと問題あるけど、それでも行きたいから海外行ってきます!」って思える人のほうが、僕は幸せだと思うんです。
皆さんも、自分の人生は好きなことを楽しんで、“元気”に生きていきましょう!

劇場公開日:2019年9月13日(金)~

脚本/監督:三谷幸喜

キャスト:中井貴一 ディーン・フジオカ 石田ゆり子 草刈正雄
佐藤浩市 小池栄子 斉藤由貴 木村佳乃 吉田羊 山口崇 田中圭
梶原善 寺島進 藤本隆宏 迫田孝也 ROLLY 後藤淳平 宮澤エマ
濱田龍臣 有働由美子

©2019 フジテレビ 東宝
https://kiokunashi-movie.jp/

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