舞台に映像作品、ドキュメンタリー番組でのナレーションなど幅広い分野で活躍する橋本さとしさん。来年1月・2月公演の舞台『キオスク』では、ナチスドイツによるホロコーストの時代をたくましく生き抜くキオスク(タバコ店)の主人・オットーを演じます。舞台の見どころとご自身の健康について、お話を伺いました。
1937年、ナチスドイツが台頭するオーストリア・ウィーンに、17歳のフランツは働きに出る。見習い店員として雇われたのはオットーが営むキオスク(タバコ店)だった。ホロコーストが始まり、人種差別が横行する時代。オットーをはじめ、店を訪れるさまざまな人々との出会いが、フランツの心に大きな影響を与えていく。
オットーは物語を象徴する人物であり、彼の性格には深く共感する部分がありました。台本を読み終えた後は、「やりたい」と二つ返事でお引き受けしました。
Photographer : HIRO KIMURA
オットーは、物語の中で主人公・フランツの人生観を大きく変えます。ただ、フランツの感情に優しく寄り添うのではなく、自身の信念・生き方を貫くことで間接的に影響を与える存在。人種の価値や尊厳が踏みにじられる時代で、世間の流れに左右されず広い視野を持って人を見つめ、愛する姿勢が、自然と周りの人々の心を動かしていくのです。
僕自身も、いじめなどの問題に対して被害者でも加害者でもない立場から「悪を見逃さない姿勢」を大事にして生きてきたつもり。彼のたたずまいには、どこか自分と同じ雰囲気を感じたのです。
今の世の中も、少数派の人々に対して壁を作り排除する流れがありますよね。組織内のいじめや、SNSでの誹謗中傷…武器を持たずとも、言葉やペンで人を傷つけられる時代です。そんな中、多数派の意見に流されず「自分はどうあるべきか」を観る人に問いかけるのがオットーであり、今回の『キオスク』という舞台。観ればきっと人生観が変わると思います。
今でこそ元のコンディションに戻りましたけど、実は自粛期間中に10キロも増量してしまって(笑)。野放しにされると甘いものや肉料理ばかり食べてしまうんですよね。自粛期間明けの一発目が映像の仕事だったんですけど、放送後にネットを見たら「橋本さとし、デカくなったな」なんて書かれていて(笑)。「これはマズい!」と大慌てでダイエットを始めて、1ヶ月弱でなんとか元の体重に戻しました。
まずは糖質を抑えようと。お菓子と炭水化物を控えて、代わりに高タンパクのプロテインを飲むようにしました。どうしても甘いものが欲しくなったときも、必ず糖質カットの食品を選んで。ただ、食事制限だけだとリバウンドもしやすいので、筋トレや有酸素運動も同時に行いました。
ウォーキングですね。体重が増えたり体力の衰えを感じると、「今日から毎日走ってやろう!」とつい意気込みがちですけど、年齢的にもケガしやすいし、やっぱり続かないんです。自分が継続できる運動を考えたときに、ウォーキングが一番だなと。歩くうちにジワ~っとゆっくり汗をかく感じが体に優しいし、風や季節の移ろいを感じられて気分転換にもなる。
それに、僕にはセリフを覚えるのにもピッタリなんです。部屋でジッと台本を見るよりも、歩きながら声に出してセリフを反復する方が何倍も速く記憶できる。そういう意味では、僕にとってウォーキングは「一石何鳥」もある運動ですね。
今年はエンターテインメントの力について深く考える年になりました。一時期は「エンタメどころじゃない」と厳しい声も浴びましたが、世の中が暗いムードのときこそ僕ら役者はお客さんの心を満たし、潤し、動かさなくてはいけない。最高のコンディションで、最高の舞台を創り、最高の感動を生む。具体的なゴールこそないけれど、責任感を持って一つひとつの仕事を積み重ねた先に、きっと明るい未来が待っていると思います。
舞台『キオスク』
作:ローベルト・ゼーターラー
翻訳:酒寄進一
演出:石丸さち子
【出演】
林翔太 橋本さとし
大空ゆうひ 上西星来(東京パフォーマンスドール)
吉田メタル 堀文明 一路真輝 山路和弘
【兵庫公演】2021年1月22日(金)~24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【東京公演】2021年2月11日(木・祝)~21日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【静岡公演】2021年2月23日(火・祝) 静岡市清水文化会館 マリナート 大ホール
【愛知公演】2021年2月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【広島公演】2021年2月27日(土) JMSアステールプラザ 大ホール
【公式サイト】
https://www.kiosk-stage.com/