撮影/石橋俊治
寅さんシリーズ50作目となる今作は、どのようなストーリー展開になっていますか?
今回は、主人公・車寅次郎の甥っ子である諏訪満男(すわみつお)を中心に、彼とその周囲の人々の“いま”を描いた作品になっています。
22年ぶりに新作を撮ると聞いたときは「まさか!」と半ば信じられずにいましたが、完成した今となっては「実現できて良かったな」という嬉しさで胸がいっぱいです。
22年ぶりの最新作で、演技に違和感や緊張感はありましたか?
それが、不思議となかったんですよ。リハーサルに入ったら、さも毎年撮り続けているような感覚で、スムーズに諏訪博(すわひろし)の役に入れました。
それに、やっぱり女房役の倍賞千恵子さんとのシーンは、ホッとした気持ちで臨めますね。この仕事をやっていると、何度も夫婦役で一緒になる女優さんはいるんだけど、彼女とは一番息が合うんです。
過去48作で築き上げた夫婦の絆も、観る方に伝わると嬉しいですね。
記念すべき50作目の公開。今作を通じてお客さんに伝えたいメッセージは?
“寅さん世代”の人には、当時劇場で観ていたときの思い出や感情と照らし合わせて観てほしいです。逆に若い人には、寅さんシリーズ特有の“古き良き日本映画の良さ”を感じてもらいたい。現代と対比して、「昔ながらの昭和の風景って素敵だなぁ」と、そんな風に思ってくれたら嬉しいです。
御年75歳の前田さんですが、日ごろ健康面で気をつけていることは?
外食はほとんどしないかな。レストランのご飯って、おいしくてつい食べすぎちゃうから!だから、家ではおいしさよりも、より健康に気遣った食事を女房が作ってくれています。“良薬口に苦し”なんて言ったら怒られるかもしれないけど(笑)
まぁでも、一見元気そうに見える僕も、実は10年置きくらいのペースで大病を繰り返しているんですけどね…。
10年置きに!どのようなご病気を…?
一番初めは、十二指腸潰瘍という腸の病気。40歳のころに発症して、1ヶ月ほど入院しましたね。
さらにそのあと、50歳では翼状片という両目に癌ができる病気になっちゃって。これが、あわや失明してしまうほどまでに進行しました。手術で腫瘍は取り除いたものの、術後数か月間は常に目の中に砂が入っているような痛みを経験しましたね…。
失明ギリギリの状態だったんですね。
友人の女優さんが、あるお医者さんを僕に紹介してくれたことがきっかけで、手術を受けることができました。その方は日本でも指折りの名眼科医で、当時『渡る世間は鬼ばかり』に出ていた僕をテレビで見て、「前田吟の目、なんだかおかしいぞ…」と気付いたのだそうです。
後日、偶然その方が勤める病院の近くを訪れる機会があり、実際に目を診てもらいました。そこで初めて失明寸前であることを知り、すぐさま手術することが決まったんです。
まさに危機一髪…。でも、無事に手術を乗り越えて、今は健康な状態を取り戻したんですね。
今はもう何事もなく過ごせています。翼状片は、手術後に再発する可能性が高いらしく、お医者さんからも「後ろ5年間は気をつけてください」と言われました。だから、しばらくの間はビクビクしながら生活していましたね。
結果として再発はなかったのですが、60歳、70歳と他にも節目節目で病気を患いました。病気を繰り返す中で、「やっぱり仕事を続けるならちゃんと診てもらわなきゃいけないな」と思い、今では定期的に病院へ行っています。
やはり、通院は大切ですね。
なんだかんだ言っても、やっぱり検査!今の医学は発達しているから、悪いところがあっても早期発見できれば何とかなるはず。特に、脳・肺・心臓の病気には気をつけないとね。「自分は大丈夫」と勝手に判断するのが一番危ないと思います。だから、まずは血液検査だけでもやってみて、自分の健康状態を知ること。それから食事療法なり運動なりで、身の丈に合った対策をとるのが良いんじゃないかな。
2019年12月27日(金)
全国ロードショー
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝原雄三
キャスト:
渥美清/倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子、前田吟、
池脇千鶴、夏木マリ、浅丘ルリ子 ほか
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