俳優 阿南 健治さんインタビュー（2020年9月25日掲載）

～舞台『真夏の夜の夢』について～

ウィリアム・シェイクスピアによる『夏の夜の夢』を、日本を代表する劇作家・野田秀樹がダイナミックに潤色した本作。割烹料理屋『ハナキン』の人々が、富士山麓の「知られざる森」を舞台に恋の喜劇を繰り広げる。演出は、ルーマニア演劇界の巨匠・シルヴィウ・プルカレーテが担当。日本とルーマニア、両国が誇る2人の鬼才がタッグを組み、独特で刺激的な世界観を創り上げる。

国内外で活躍する劇作家・野田秀樹さんによって潤色された本作品。舞台の見どころを教えていただけますか？

原作はシェイクスピアによるものですけど、この作品自体はほとんど野田さんのオリジナルで。なんと言っても、舞台がギリシャのアテネから日本の割烹料理屋に変わっていますからね！ 本来の要素を残しつつ、世界観はかなり日本に寄せているって感じで、お客さんも親しみやすいんじゃないでしょうか。
それに加えて、原作ではあまり表現されていない人間の“愚かさ”や“悲しさ”を描いているから、より味わい深い物語になっているのかなと思います。人間の本質的な部分を、喜劇として面白く表現できたら楽しいと思います。

演出を務めるプルカレーテさんとは、今回が2度目だそうで。

そうなんです。2017年の『リチャード三世』以来です。プルカレーテさんは自分の中に確固たる世界観を持っていて、それを私たち役者に熱意を持って伝えてくれるんです。言語の壁があるのにも関わらずで。
だから、基本的に自由に演じられる環境ではあるんですけど、いつの間にか役者全員が「プルカレーテさんの思いに応えよう」って団結する。あのエネルギー溢れる現場で再び稽古ができるのは楽しみですし、きっと新たな発見もあるんじゃないかなって今からワクワクしていますね。

舞台や映画でコンスタントに活動を続ける阿南さん。健康面で気をつけていることは？

健康に気をつけるって、意外と難しいですね。健康と言えば私、ずっと「帯状疱疹後神経痛」っていう後遺症が上半身の右側に残っていて、もう6年間くらいなのかな？ 痛みと付き合い続けているんです。発症したのがちょうど舞台中で、処置が遅れちゃったのが失敗でした。
病気になってみると思い知らされるんですよね、「病魔は自分の知らないところで大きくなっていて、明らかになって初めてその存在に気づくものなんだ」って。だから、発症を未然に防ぐって簡単じゃないと思うんです。私としては、ある程度歳をとったら「そろそろ何か来るかな…」って覚悟し、自分の身体と対話することが大事かな。そのほうが、いざ病気が発覚したときも精神的に頑張れる様な気がして。人間のパワーである自己治癒力も信じていますからね (笑)。

阿南さんは、私生活で日記を書かれているんですよね。20歳からずっと続けられているのだとか。

はい。その日に何をしたか、毎日書き記してはいますね。あと、一日一枚必ず写真も撮る。それを自分に課してるんです、「なにか書きなさい、撮りなさい」って。私は課さないと何にもしないですからね(笑)。
私は、とにかく動く、ですね！ 書くことや撮るものがなくても、探しに行く。すると不思議なことに、探すと必ず「出会う」んですよ(笑)。

「出会う」…。例えばどのようなものに？

シンプルですけど、外に出れば虫がいたり、猫がいたり、飛行機が飛んでいたりするんですよ、当たり前なんですけどね(笑)。その“当たり前”を見つめることで何かを感じたり、考えるきっかけが生まれる。私だったら、絵を描こう、物語を考えようって気持ちが芽生えたり。「描くものがない」で止まっていても仕方ないから、まずは何も考えず“線を引く”。線を引いてみたら「あ、ここに丸を書き足したら面白い！」って、また新たな発見があるかも、ですからね(笑)。
だから、「何を描こう？」って迷わないで。まずは動きましょう、線を引きましょう、ですね。

最後に、阿南さんが理想とする“歳の重ね方”を教えてください。

人生100年で考えたら、私に残っているのはあと40年ちょっと。まだまだ役者を極めたいと思いますし、自分で色々な作品を作ったりもしたい。はたまた、40年後の日本や世界も見てみたいですね。もうじき還暦ですけど、好奇心は18歳から変わっていないんですよ(笑)。
だから、最後まで体も脳も健康でいたい。できる限り、今と同じ阿南健治であり続けたいですね。