~松澤一之さんプロフィール~
1955年、愛媛県出身。1978年に文学座研究所を卒業し、劇団夢の遊眠社に参加。舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(17)、手塚治虫生誕90周年記念 舞台『悪魔と天使』(19)、『日本文学シアターVol6【坂口安吾】 風博士』(19)、『サンソン -ルイ16 世の首を刎ねた男-』(21)、ドラマ『HiGH&LOW』(15-NTV)、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(16-NTV)、『HiGH & LOW Season2』(16)、『テセウスの船』(20-TBS)、『イチケイのカラス』(21-CX)など、数多くの作品で幅広く活躍している。
舞台『僕はまだ死んでない』~あらすじ~
壁に包まれた病室。父の慎一郎と担当医、それに僕(直人)の友人とが話をしている。体が動かない。何が起こったのか。担当医は淡々と「元通りになる可能性はないし、むしろ生き延びたことを奇跡だと思ってほしい」と話す。
なるほど。そういうことなのか———。
奇跡的に意識が戻った後も、かろうじて動く目だけで意思疎通の方法を探る。なにかと気にかけてくれる友人、そんな状態の前でかまわず担当医に軽口をたたく父、戸惑う担当医。そこへ離婚調停中の妻が面会にやってくる———。
本作はまず、昨年のコロナ禍で有観客公演が困難な中、視聴者が主人公の視点になって360度の世界で物語を体験する“VR演劇”として発表されたものです。劇場での舞台作品としてリライトされた今回の台本を読んでの感想と、松澤さんの役どころについて教えてください。
VR版は映像と演劇がミックスされたものなので、このご時世だからこそ生まれたアイデアというか、実験的な要素が多く盛り込まれていたと思います。劇場で上演する今回に関しては、演劇的な要素がより増えていると思います。
僕は今回、主人公・直人の父親である慎一郎を演じます。終末期医療や尊厳死というものがテーマにある物語の中に「笑い」をもたらす立ち位置ですが、この塩梅が難しい。単に笑わせればいい、面白ければいいわけじゃありませんから。息子が生死の境を彷徨っている中で、父親として何を想い考えているのか。自分で納得した上で、嘘が無いように演じたいですね。
飄々(ひょうひょう)とした慎一郎は、松澤さんらしいキャラクターのように感じました。
たぶん慎一郎は、その場を暗いムードにしないように意図的におかしなことを言ったりしているんですよね。良く言えばポジティブな性格なのだと思います。そういう意味で彼の振る舞いはすごく愛くるしい。その反面、息子の直人と病床で二人きりになる場面では弱音を吐いたり、亡き妻の話をする「弱さ」もありますから、とても人間味あふれる父親だと思いますね。
尊厳死について深く考えさせられる本作。松澤さんはどのように受け取りましたか?
こういう問題に結論を出すのって、本当に難しいと思うんです。生きられるだけ生きてほしいという身内の思いもあれば、早くラクにさせてほしいという当人の意思もある。はたまた、一番近くで看護にあたっている家族の精神状態も考えなくてはいけない。とても「きれいごと」じゃ済ませられないですよね。
劇場へ観に来てくださるお客さまには、ぜひ僕たち演者と一緒にこの問題について考えていただけたら嬉しいです。
命のことを考える上で大切になるのが健康だと思いますが、松澤さんは日ごろ健康のために取り組んでいることはありますか。
睡眠時間は一日8時間とるようにしています。お酒は飲まない、運動はしっかりする、というのが良く眠れる秘訣なのかも知れません。運動も、本来は芝居や役作りのためにやっていることですが、結果的に健康につながっている気がしますね。
あと『元気になるビデオ』というのを作っていて、色々なテレビ番組を録り溜めています。俳優業の先輩である市村正親さんや、最近でいうと90歳でフィットネス・インストラクターをされている瀧島未香さんのトレーニング映像を見て元気をもらっています。自分より10も20も年上の方が現役で頑張っている姿には刺激を受けますね。
2022年、お仕事や私生活において、チャレンジしたいことなどはありますか。
とにかくコロナが終息してほしい。それに尽きますね。経済が回らないことで、一体どれだけの人が不幸になっていることか。舞台だって、お金に余裕がなければお客さんは劇場に足を運ぶこともできませんから。昔は「不況なときに、演芸にはお客さんが来るんだよ」なんて言われましたが、今はそうではありません。
早くみんなが笑顔で暮らせる世の中になって、行きたいところにも気軽に行けるようになったらいいな、と。
最後に、健康を求める読者の方にメッセージをお願いします。
時世柄、難しい部分はありますが、ただずっと家に篭り続けるのは良くないと思います。いくつになっても、自分が好きなことや熱意を注げる何かを持っている人は、元気で若々しい。例えば、70歳を超えてもマクドナルドで働いている方なんて、すごく素敵だと思うんですよ。働くことって、何かを得ることですから。仕事場での交友関係もそうですし、モノでいうなら「お金」ですよね。そのお金で孫にプレゼントを買ってあげたり、温泉旅行に行けたりするわけで。
「やりたいことや、夢を持ち続けましょう」と言うとありきたりな言葉かもしれませんが、やはりそういった目標を持つことが健康につながるのだと思います。
2022年2月17日(木)~2月28日(月) 銀座8丁目 博品館劇場
【原案・演出】ウォーリー木下
【脚本】広田淳一
【出演】矢田悠祐 上口耕平 中村静香/松澤一之・彩吹真央
主催/企画・製作:シーエイティプロデュース
【お問い合わせ】チケットスペース 03-3234-9999(平日10:00~13:00)
公式サイト:www.bokumada2022.jp