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俳優 佐藤浩市さんインタビュー(2023年7月25日掲載)

日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を2度も受賞し、名実ともに日本を代表する俳優として活躍中の佐藤浩市さん。政治家や漁師、凶悪犯から新聞記者まで、あらゆる役をリアルに演じ、作品に強烈なインパクトを残します。


スタイリスト/喜多尾祥之 ヘアメイク/及川久美 撮影/梁瀬玉実

~佐藤浩市さんプロフィール

1960年12月10日生まれ、東京都出身。80年に俳優デビュー後、数々の映画やTVドラマに出演し、『忠臣蔵外伝四谷怪談』(94)、『64‐ロクヨン‐前編』(16)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。最近作は、MIRRORLIARFILMSSeason2『IMPERIAL 大阪堂島出入橋』『20 歳のソウル』『キングダム 2 遥かなる大地へ』(22)、『ファミリア』『ネメシス黄金螺旋の謎』『仕掛人・藤枝梅安 2』『せかいのおきく』『大名倒産』『キングダム運命の炎』(23)などがある。また待機作として『愛にイナズマ』(2023 年秋公開)が控える。21 年には歌手としてアルバム「役者唄 60ALIVE」を発表している。

今回主演を務める映画『春に散る』では、自身と同年代の元プロボクサー役を等身大で演じ、日本映画史上最強の「胸熱ドラマ」が誕生しました。その舞台裏と、佐藤浩市さんの役者魂が伺える内容をたっぷりお届けします。

映画『春に散る』~あらすじ~

不公平な判定で負けた後アメリカへ渡り、40年ぶりに帰国した元ボクサー・広岡仁一(佐藤浩市)は、偶然訪れた飲み屋で、自分と同じように不公平な判定で敗北し心が折れたボクサー・黒木翔吾(横浜流星)と出会う。人生で初めてのダウンを仁一に奪われたことで、翔吾はボクシングを教えてほしいと仁一に頼み込む。やがて二人は世界チャンピオンを目指し、共に夢を追いかけていく。

沢木耕太郎さんの原作『春に散る』の映画化にあたり、瀬々監督いわく「主人公は佐藤浩市さん以外いない」とおっしゃられたそうですが、お話を受けた際はどう思われましたか。

 主人公の年齢的に、渡辺謙か中井貴一か佐藤浩市ぐらいしか居ないなって(笑)。最初に原作を拝読して、主人公の立ち位置とか含めて沢木さんの作品らしいと思いました。それを瀬々監督と一緒に「どうやって作っていこうか」とお話をした際、今の時代、一方的に先人が若い子に物を教えて引っ張り上げることもあれば、逆に若い子たちの生き方、生き様によって我々先人たちが教えられることもあるんじゃないかと。ここが昭和の頃の映画と少し違っても良いんじゃないかという話になりました。

元プロボクサーである広岡仁一を演じてみて、どういう人物と捉えましたか。

 良い意味での負け犬にしたかったです。過去にプロボクサーとして成功し渡米したけど、そこから紆余曲折して、ボクシングを諦めた言い訳と自身の病気を抱えて日本に帰国する。人生の終盤も、負け犬をぬぐい切れない自分を言い訳するかのように、成功したボクサー時代の仲間と一緒にいたいと思う。そんな負け犬だけど、若いボクサーの翔吾(横浜流星)との出会いで最初は否定していたものが覚醒し、立ち上がって自分の人生を生き切ろうとする男の物語です。
 言い訳って悪いように聞こえるけど、決して悪いことばかりではないと思います。当時の気持ちに理由をつけて、何かを諦め生きていくのも大切なこと。逆にそうじゃない、諦めの悪い奴らを見たときに、その連中がやっていることに対して自分が素直に熱くなれるか、両極の大事なことだと受け取れるかどうかを、お客さんに感じてもらえたら嬉しいなと思います。

佐藤さんはこれまでにも何度かボクシング映画に挑戦されています。今回久しぶりの挑戦にあたり、感じたことはありましたか。

 僕がいちばん最初にボクシングをやったのは『青春の門 自立篇』という映画でした。当時は具志堅用高さんやガッツ石松さんに、現場でトレーニングをしてもらって、色々教えてもらいましたね。今やってみて感じるのは、ボクシングもだいぶ様変わりしたこと。『春に散る』の原作にも出てきますけど、昔のボクシングって「倒すか倒さないか」。ある時代から「倒されない」、倒されることを非常に避けるようなボクシングが多くなったと感じます。いわゆるポイント制のような。その移り変わりが劇中で語られているのも、面白みの一つです。

映画を拝見させていただいて、終盤の試合シーンは圧巻でした。その場に立って、声を出して応援したくなるような臨場感が忘れられません。

 ボクシング映画って、ボクシングファンからすると一番嫌がる傾向にあります。いわゆる、パチモン(偽物)やんって。でも実際その懸念を覆す、キャストおよび制作陣の熱い思いとエネルギーがあったと僕は思います。最後の試合のシーンも、朝から晩まで4日間かけて撮影をしました。演技とはいえ、実際にスパーリング※では体にパンチが入っています。見ているこっちが、「やべえな、大丈夫か」って感じるくらい。翔吾を演じた横浜流星くんも、本当にボクシングのプロテストに合格しましたし、それぐらい本気度と熱量が伝わる映画になっていると感じます。あのラスト20分を長いと感じるお客さんはいないと思う。
※グローブと防具をつけ、試合形式で行う練習

劇中の、佐藤さんの俊敏な動き、体づくり、姿勢の良さも印象的でした。鍛えていらっしゃるのですね。

 たまたま作品が続いたっていうのもありますけど、仕事も趣味のゴルフも、まだ若い人には負けないぞと思ってやっています。まぁ、負けるんだけど(笑)。70歳まではゴルフで250ヤード飛ばしたいと思っています。
そういう意識でやっていると、仕事も趣味も、体がある程度動ける点でベクトルは一緒な訳です。安っぽい言い方かもしれないけど、負けないぞっていう意識でやってきたことが良かった。

本業もゴルフも、ますます目が離せません。他にも、何か健康面で気を付けていることはありますか。

 数か月前から、お酒を一日おきにしました。最初は無理だろうなって思っていたけど、案外無理じゃないというのが面白い。休肝日うんぬんと言うよりかは、トータルの酒量のバランスに気をつけています。飲むときは飲むけど、飲まないときは飲まないといったメリハリ。食事は妻がよく管理してくれています。甘いものが大好きだから、糖質は摂りすぎないようにしています。

同年代のお仲間内で、健康の話はされますか。

 全然しないです。それこそ僕らの先輩たちは、現場でよく健康や体の話をしていたけれど、それを聞きすぎたせいか、僕らの代ではしないですね。――(以前出演いただいた役所広司さんの記事を見ながら)この人は強いよ! お酒の量も全く変えてないからね(笑)。でも、みんな個々では気を付けて何かやっているんだろうな。
僕も体に気を使いつつ、今後も仕事に対して「常に新しく感じて」取り組みたいと思います。経験のある役のオファーがきたとしても、昔の引き出しから引っ張り出すのではなくて、新しい引き出しとして取り組みたいです。


8月25日(金)全国公開

【監督】
 瀬々敬久

【原作】
 沢木耕太郎『春に散る』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)

【出演】
 佐藤浩市 横浜流星
 橋本環奈 坂東龍汰 片岡鶴太郎 哀川翔 窪田正孝 山口智子

【配給】
 ギャガ

©2023映画『春に散る』製作委員会