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俳優 役所広司さんインタビュー(2022年12月25日掲載)

戦国武将から極道もの、普通のおじさんまであらゆる役を演じ、日本のみならず世界でも高い評価を得ている俳優・役所広司さんにインタビュー。主演を務める映画『ファミリア』では、不器用ながらも家族を深く愛する父親を演じます。映画の見どころやご自身が思う「家族観」などから垣間見える、役所さんの魅力をお届けします。

撮影/牧野健人

~役所広司さんプロフィール

1956年1月1日生まれ。長崎県諫早市出身。近年では、第42回日本アカデミー賞で自身3回目の最優秀主演男優賞を受賞した『孤狼の血』(18)や、シカゴ国際映画祭において最優秀演技賞を受賞、また第95回キネマ旬報ベスト・テン 主演男優賞(24年ぶり3 回目)を受賞した『すばらしき世界』(21)、『峠 最後のサムライ』(22)など、数々の話題作に出演。今後は『銀河鉄道の父』が23年GW全国公開、Netflixシリーズ『THE DAYS』が23年配信予定。またヴィム・ヴェンダース監督によるプロジェクト『THE TOKYO TOILET Art Project』の映画にも出演予定。日本を代表する俳優として活躍している。

戦国武将から極道もの、普通のおじさんまであらゆる役を演じ、日本のみならず世界でも高い評価を得ている俳優・役所広司さんにインタビュー。主演を務める映画『ファミリア』では、不器用ながらも家族を深く愛する父親を演じます。映画の見どころやご自身が思う「家族観」などから垣間見える、役所さんの魅力をお届けします。

映画『ファミリア』~あらすじ~

陶器職人の神谷誠治(役所広司)は妻を早くに亡くし、山里で独り暮らし。アルジェリアに赴任中の一人息子の学(吉沢亮)が、難民出身のナディア(アリまらい果)と結婚し、彼女を連れて一時帰国した。結婚を機に会社を辞め、焼き物を継ぐと宣言した学に反対する誠治。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年マルコス(サガエルカス)は半グレに追われたときに助けてくれた誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんなある日、アルジェリアに戻った学とナディアをある悲劇が襲い……。

映画『ファミリア』は、国籍・文化・境遇の違いを超えて『家族』を作ろうとする人々の物語です。役所さんが思う映画の見どころを教えてください。

 「今の日本」を描いている作品だと思います。少子化の影響で、外国の方々の労働力に頼るしかないといった現実があるから、映画の中で多くの外国人が登場しても全く違和感がない。もう数十年前になりますが、『KAMIKAZE TAXI』という作品で、ブラジル日系人の方々に話を聞いたことがありましたけど、今作で描かれる在日ブラジル人の苦労や葛藤と全く変わっていないように感じました。そういった移民の方々が抱える悩みのリアリティも、感じてもらえると思います。

©2022「ファミリア」製作委員会

役所さんが演じるのは、親の愛を知らずに育った不器用な父親です。

 誠治は親の愛情を知らずに育ったことから、若い頃はかなりの荒らくれ者で、亡くなった奥さんや息子の学(吉沢亮)に対しても、父親としてはどこか欠けていたのだと思います。接し方や、気持ちの表現方法が分からなかったのだと思う。でも自分が没頭できる陶芸だけは夢中になれて、その中では彼は平和だったと思います。

陶芸のシーンは指先まで美しく、丁寧な描写が印象的でした。焼き物の練習は何カ月も熱心にされたとか。

 もともと焼き物は好きで、陶芸の仕事にも憧れがありました。手で土を固めて、形にしていく。その過程が好きで、練習も楽しかったです。
ほかにも薪割りとか、時間と労力をかけた分、最後の焼きでどんな物が出てくるのか分からないドキドキ感は、映画作りとも似ているような感じがしました。

©2022「ファミリア」製作委員会

息子役の吉沢亮さんとは初共演。どのような印象をお持ちですか。

 吉沢君はまだ若い俳優さんですけど、今回は演技が初めてという俳優さんがたくさん出演した映画だったので、もうすでに大先輩として彼らに接してリードしてくれていたと思います。コロナの影響で撮影が1年半以上延期になったことから、大河ドラマを終え、番組を支えてきた力強さを感じました。

©2022「ファミリア」製作委員会

『家族』が大きなテーマとなる今作品。役所さんにとって『家族』とは。

 何においても「味方」ですね。どんなことがあっても、最終的に味方でいてくれるのは家族だと思います。家族からのアドバイスや助言は、信頼できる。家族間の悲しいニュースを見ると、やっぱり親ないし大人が子どもを導いてあげないと、どこか欠けた人間が育ってしまう気がします。生まれ持った性格もあると思うけど、ある程度導いてくれる人間がそばにいることが大切だと思いますね。

劇中では不器用な父親役ですが、実際の役所さんはどんな父親なのでしょう。

 日本人の性格かもしれないですけど、身近であれば身近な人、大切であれば大切な人こそ、褒めたり大事なことを言ってあげたりしない風習がありませんか? 僕もそこに近いというか、「言葉で言わなくても分かるだろう」っていうところがありますね。
でも昔は、じいさんばあさんとかが親の代わりに「お前の父ちゃんは、本当はこう思っているよ」って言ってくれたからなぁ。それが無くなってくると、家族の間に誤解が生まれてしまうかもしれないですね。僕も不器用な父親だと思います。

映画を通して、見る人にどんなことを感じてほしいですか。

 いろんな感じ方をしてもらえるのが一番ですが、血縁に限らず「相手の痛み」を感じることができる人間関係が、映画のタイトルでもある『ファミリア』を指しているのだと思います。映画を見終わった後に、ふっと、大切な人に会いに行こうかな、連絡してみようかなという気持ちになってくれたら良いですね。

成島監督とは久しぶりのタッグです。

 監督が大病をして心配していましたけど、以前よりも気力っていうか、監督として研ぎ澄まされているような気がしました。「自分は撮らなければいけない」っていう使命感。諦めずにやるぞっていう気力をとても感じましたね。
それに監督は、やっぱり若者が好きだなって。オーディションで俳優経験のない人たちが選ばれて、一緒に映画を作る仲間として色々なことを教えていましたね。撮影現場でも、彼らの可能性を見てよく粘っていました。「もっとできる」って。まぁ言ってみれば、ベテランの親父たちが焼きもちを焼くぐらいの愛情を注がれていたんじゃないかな(笑)。

学(吉沢亮)が在日ブラジル人の青年マルコス(サガエルカス)に、「夢を持つことはこわいことじゃない」と伝えるシーンがあります。俳優人生46年目を迎えられた役所さんの夢を聞かせてください。

 ささやかな夢ですけど、「今日は一日何をしようかな」って考えて、本棚いっぱいになった、買っただけで読んでいない本を、眠くなりながら読みたい。違う国にも行きたいですね。コソコソせずに顔も出して、っていうのが本来の自分に戻れる感じがあるので、そういう時間を過ごしていきたいです。

お忙しい中でも心がけている、体力維持や健康法などはありますか。

 やっぱり「体を動かすこと」ですね。自分で意識的に動かさないと、本当に弱っていくばかりだと実感します。普段はウォーキング、自宅で自転車こぎや軽い筋トレをやっています。
体を動かすことでお腹も空くし、良いサイクルが生まれると思います。

映画が公開される数日前に、役所さんは67歳を迎えられます。同世代の方も多い読者の皆さんに向けて、簡単な元気アドバイスをお願いします。

 好きなときに好きなものを、食べて飲んでといきたいところですが、歳を考えるとなかなか出来なくなりますよね。でも、丈夫な体で老後を過ごすためには、体を動かして、よく噛んで食べることが大切らしいので、意識して取り組んで元気に過ごしましょう。僕も職業柄、早食いやテレビを見ながらの食事をついついしてしまうので、意識していきたいと思います。

2023年1月6日(金)新宿ピカデリーほか 全国公開

【出演】役所広司
    吉沢亮 / サガエルカス ワケドファジレ 中原文雄 室井滋 アリまらい果
    シマダアラン スミダグスタボ
    松重豊 / MIYAVI
    佐藤浩市

【監督】成島出

【配給】キノフィルムズ

©2022「ファミリア」製作委員会