撮影/安友康博
なつい いつき/1957年5月13日生まれ。愛媛県出身、松山市在住。中学校の国語教師として8年間勤務したの後、俳人に転身。1994年に「第8回俳壇賞」を受賞。創作活動のほか、俳句の授業「句会ライブ」を定期的に開催するほか、俳都松山大使に就任するなど幅広く活動中。2013年からは人気バラエティ番組「プレバト!!」(毎日放送制作)内の企画「才能査定ランキング」で俳句部門の査定を担当。句集「伊月集 龍(朝日出版社)」、「夏井いつきの超カンタン! 俳句塾(世界文化社)」「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業(PHP研究所)」など著書多数。
夏井さんといえばバラエティ番組「プレバト!!」で厳しく俳句の添削をされている姿が印象的です。
テレビなのでキャラクターとして作っています(笑)「実際、会ってみるとすごく優しいんですね」とよく言われます。とはいえ、「プレバト!!」のおかげで俳句を身近に感じる人が増えたので感謝しています。
11月14日に刊行された『おウチde俳句』という本はどんな本ですか。
俳句を始めると「季語を実際に体験するため、外に行きましょう」とよく言われます。私もこれまで同じようなことを言い続けてきましたが、自分の周りの俳句をやっている人たちを見てみると、「ずっと入院していて外出できない」「介護をやっているので思うように外に出られない」という声が多くなっていることに気づきました。そんな時に出版社の方から「外に出なくても俳句を楽しむことはできるという本を出せないか」と相談され、「それだ!」と思って足かけ3年でやっと出版できたのがこの本です。
外に出なくても俳句を楽しむための入門書というわけですね。
俳人の正岡子規も病床にありながら素晴らしい句をたくさん残していますが、俳句で大事なのはいかに注意深く観察して俳句のテーマとなる“俳句のタネ”を見つけられるかということ。だからこの本では、リビング、寝室、台所といったように部屋ごとに章分けして、それぞれでどのように観察すれば“俳句のタネ”を見つけられるかを、わかりやすく紹介しています。
俳句は難しいんじゃないかと思っている人も多いと思います。
実は俳句はひとつ型を覚えてしまえば、そんなに難しいものじゃないんです。それに、上手になる必要なんて全くありません。季節の移り変わりや自分の生活を記録したり、自分の感情を整理するような感覚で俳句を楽しむのが一番大切なことなんです。
テレビで見る夏井さんは、とてもパワフルな印象があります。元気の秘訣は?
好きなことをしているのが一番の健康法じゃないでしょうか。今の生活は全国各地を飛び回る忙しい生活ですが、マネージャーである夫と一緒に全国のおいしいものを食べたり、おいしいお酒が飲めます。それに、句会ライブではお客さんと一緒に俳句を楽しんでパワーをもらっているので、元気でいられるんだと思います。
全国を飛び回っているので、飛行機や新幹線での移動も多いと思います。疲れませんか?
どこでも寝られるというのが私の健康の秘訣の一つかもしれませんね(笑)。移動中はとにかく寝ています。15分でも寝ると体が楽になるのを感じるので、移動中はむしろ疲れをとるリラックスタイムですね。
現在のお住まいは道後温泉の近くだとか。温泉も健康法の1つですか。
温泉が大好きで毎日温泉に行くために近くにマンションを買ったのですが、今は忙しくてなかなか行けなくなっています。代わりに、各地に行くときは必ずその土地の温泉に行けるようなスケジュールにするようお願いしています(笑)。仕事と温泉が交互に楽しめる生活ができれば、もっと健康的なのになと思いますね。
食べ物で気を付けていることは?
夫の妹のさっちゃんが調理師の免許を持っていて、栄養にも気を配った料理を作ってくれるのでとても助かっています。会社のメンバー全員で食べます。さっちゃんが作ってくれるランチは、必ず青汁が最初に出されます。野菜はふんだんに使われ、肉や魚はバランスよく、ご飯も雑穀米を使ってくれています。しかも、どのお料理もおいしいんです。私を含め、会社のメンバーがみんな元気なのはさっちゃんのおかげですね。
夏井さんは健康のためにも俳句を詠むべきとよくおっしゃっています。
はい。俳句は健康にもってこいだと思います。俳句を作るために外に出て歩き回るので、適度な運動になりますし、精神衛生にもとてもいい。実際、句会ライブなどに来てくれるお客さんや俳句サイトに投稿してくれる方からも「俳句を始めたことで健康になった」という声を数多く聞きます。
たくさん考えをめぐらすので頭の老化防止にもよさそうですね。
認知症予防に役立つという実験データも出ていますし、予防じゃなくて治療に使っているという声もよく聞きます。認知症だけでなく、うつ傾向にあったり、長い間引きこもっていた人が俳句と出会って外に出ていけるようになったり、他人と交流できるようになって回復してきた、うつ状態から抜け出したという人は数多く見てきています。それに、俳句を募集しているところはたくさんあって、賞品や賞金も当たるかもしれない(笑)。俳句をやって悪い事って何ひとつないんです。
夏井さんが今、一番やってみたいことは?
孫が4人いるのですがすべてのお遊戯会、運動会に参加してみたいです。ただ、仕事で忙しいのでなかなか参加できないのが今の悩みです。
最後に読者にメッセージを。
俳句は健康にもよくて、お金もかかりません。家族のことを詠んだ俳句があれば、のちのちも家族の心に残り続ける本当にいい趣味だと思います。ぜひ気軽に始めて、一緒に楽しんでいただけるととてもうれしいです。
「どこに居ても、いつだって俳句はできる」。そんな信念から夏井さんが書き上げた「家のなかだって俳句のタネはたくさんある!」ということを実証する俳句入門書です。
著者:夏井いつき
出版社:朝日出版社
価格:1680円+税
全国の書店にて絶賛発売中
左写真のクレジット
写真提供/夏井&カンパニー