ヘアメイク/晋一朗(IKEDAYA TOKYO) スタイリスト/勝見宜人(Koa Hole) 撮影/梁瀬玉実
~佐々木蔵之介さんプロフィール~
1968年、京都府出身。劇団『惑星ピスタチオ』に旗揚げから参加し、98年退団まで同劇団の看板俳優として活躍。その後、上京して本格的な俳優活動を開始し、テレビ・映画・舞台など数多くの作品に出演。14年には歌舞伎デビューも果たす。第17回読売演劇大賞 優秀男優賞、第40回菊田一夫演劇賞 演劇賞、第38回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞受賞。
舞台『冬のライオン』~あらすじ~
イングランドの初代国王ヘンリー二世は、数重なる戦果で領土を広げてきた。広大な領地アキテーヌを持つ年上の妻・エレノアは、何度も反旗を翻したため、幽閉されている。人質として育てられてきた先代フランス王の娘アレーは、今や美しく成人し、ヘンリーの愛妾となっている。そしてアレーの異母きょうだいである現フランス王フィリップがついに迫る。『領土を返還するか、アレーをヘンリーの後継者と結婚させるか、選ぶ年限が来た』と。
いよいよ相続のけりをつけなければならない。1183年のクリスマス、一同はシノン城に集まる———。
佐々木さんが主演を務める舞台『冬のライオン』が2月より上演されます。作品の印象と、台本をお読みになっての感想を教えていただけますか。
『冬のライオン』は、中世のイギリス王室を舞台に、クリスマスの一泊二日で王位継承をめぐる一家の争いを描いた作品です。今回のオファーを頂くまで知らなかったのですが、ちょうど僕が生まれた年に映画化もされていたんですね。まず戯曲を読んで、その後に映画を観ましたが、とても50年以上前の作品とは思えませんでした。度が過ぎていて笑えるんですよね(笑)。そこまでケンカしないと確かめ合えないのかっていう険悪な家族関係だったり、相手に対して配慮のない言葉をぶつけ合う姿がとても面白くて。イギリスを舞台にした作品ならではのユーモア、ジョークが詰め込まれた作品だと思います。
佐々木さんが演じるのはイングランド国王のヘンリー二世。このキャラクターについてはどのような印象を抱きましたか?
「中世イギリスではほとんどの人が老いさらばえる50歳という年齢で、精神的・肉体的活力の最後の急上昇を迎えている」というのがヘンリーの人物像です。いい年して自分の権力をまだ息子たちに譲らない、国王でありながら一番子どもっぽくて頑固な男なんですね。年齢でいえば僕と等身大ですが、性格は全く違います(笑)。
ただ、そんな幼稚な面も、キュートでチャーミングに見せられたら良いなと思っています。憎たらしくもあり、彼のキャラクターをちゃんとお客様に愛してもらえるようにも演じたいです。
ヘンリーの妻である王妃エレノアは高畑淳子さんが演じます。共演に際して楽しみにしていることはありますか。
高畑さんは舞台でもドラマでも幾度もご一緒させていただいている大好きな女優さんです。日本の作品に収まりきらない規格外なオーラというか、ゴージャスな感じが魅力的ですよね。それでいてコメディエンヌでもあるので、ゴージャス且つ〝トホホな演技〟もしてくれる女優さんの筆頭だと思います。
今回は僕が国王で、高畑さんが妃という間柄なので、二人の掛け合いを夫婦漫才っぽく見せられたら面白いですね。
舞台と映像で多くの作品に出演されている佐々木さんですが、それぞれの分野で意識されていることは?
舞台は「ダメ」をもらう場で、映像は「OK」をもらう場だと思っています。映像は一度OKが出たら、そのシーンはもうそれっきり撮らなくていいので、「これで決まり」と言われる演技をしなくちゃいけない。舞台はそれと違って、稽古場でダメをもらって、本番の公演が始まっても「今日は何がダメだったか」を教わって、また翌日の公演に臨む。最後まで何が正解か分からない、終わりがないんです。そういった意味では映像と違った難しさがあります。
その日に世間で何が起こって、お客様がどういう心情を抱いているかによっても芝居の受け取られ方は変わりますから。稽古場で気づかなかったことを、劇場でお客様に教えて頂けるのも舞台の醍醐味です。
今後も俳優業を続けられる上で、目標などはありますか?
上にはまだまだ多くの先輩方がいらっしゃるな、と常々感じます。先日までドラマで共演させていただいた段田安則さんや、昨年末に旭日小綬章を受章された橋爪功さんであったり。年齢を感じさせず、しなやかに、軽やかにお芝居される偉大な先輩方を見ていると、自分も満足するにはまだ早いなと思います。無理し過ぎず、多少の冒険心を持ちながら色々な挑戦をしていきたいですね。
今回の『冬のライオン』は、家族がテーマの舞台でもあります。佐々木さんご自身の家族に対する想いを教えてください。
今は弟が継いでくれているのですが、僕の父は京都で『佐々木酒造』という造り酒屋を経営していました。近所の造り酒屋が次々となくなっていくなかで、父はずっと家業を守り続けてくれました。そのおかげで今の僕があるので、本当に感謝しています。
家業を守ってくれたのは僕ら家族の生活のためでもあり、酒造という伝統産業を廃れさせたくないという想いもあったからだと思います。僕は後を継げませんでしたが、俳優として、父のように自分の家庭も仕事もしっかり守れる大人でありたいですね。
2022年2月26日(土)~3月15日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
【作】ジェームズ・ゴールドマン
【翻訳】小田島雄志
【演出】森 新太郎
【出演】佐々木蔵之介/
葵 わかな 加藤和樹 水田航生 永島敬三 浅利陽介/
高畑淳子
【お問い合わせ】
お問い合わせ:東京芸術劇場 ボックスオフィス 0570-010-296(休館日を除く10:00 ~ 19:00)
公式サイト:www.thelioninwinter.jp