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映画監督 篠原哲雄さんインタビュー(2021年6月25日掲載)

恋愛映画からミステリー、ヒューマンドラマと幅広いジャンルで数々の作品を生み出してきた篠原哲雄監督。今回のインタビューでは、7月22日(木・祝)より公開される映画『犬部!』の見どころと、ご自身の健康観、人生観についてお話を伺いました。


撮影/梁瀬玉実

篠原哲雄さんプロフィール

1962年、東京都出身。助監督や自主制作映画で経験を積み、山崎まさよしが主演した初長編映画『月とキャベツ』(96)で話題を集める。以降、『はつ恋』(00)や『命』(02)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06)、『起終点駅 ターミナル』(15)など話題作を監督。野村萬斎が主演した『花戦さ』(17)では、第41回日本アカデミー賞優秀監督賞に輝いた。

 恋愛映画からミステリー、ヒューマンドラマと幅広いジャンルで数々の作品を生み出してきた篠原哲雄監督。今回のインタビューでは、7月22日(木・祝)より公開される映画『犬部!』の見どころと、ご自身の健康観、人生観についてお話を伺いました。

7月22日より公開される映画『犬部!』。ノンフィクション作家の片野ゆかさんによる原案『北里大学獣医学部 犬部!』をもとに、犬や猫の命と向き合う人間の姿を描いた心温まる作品です。

 僕はこれまで動物をテーマにした作品を撮った経験がなく、『犬部!』の映画化のお声がけをいただいた当初は、「自分にできるだろうか」という不安がありました。何より、過去に作られた多くの映像作品のように、動物の可愛さだけを全面的に押し出した映画になってしまうのではないかという怖さがあったのです。
 ですが、原案を読んでいくうちに、動物愛護に尽力する獣医さんの生き方や考え方、殺処分されてしまう犬猫の悲惨な現実など、「人間はいかにして動物と共生していくべきか」という問題に深く踏み込んだ話なのだと分かって。自分の中で問題意識が芽生え始め、動物にフィチャーした人間ドラマを描きたい、という思いから制作を決意しました。

劇中では、人と犬が意思の疎通を図る場面が数多くあります。

 撮影では、全てのカットにおいて動物プロダクションの方が立ち合ってくださいました。例えば、主人公の颯太(演・林遣都)が苦境に陥ったときに彼の愛犬である花子が「大丈夫だよ」と目配せするシーンがあるのですが、実際は花子の目線の先には飼い主の方がいて、合図を出してもらっているんです。
僕たち制作陣は、各カットの意図を事前にプロダクションの方と共有した上で、演者と動物が直接コミュニケーションをとっている風に見えるよう、撮る角度にこだわりました。動物たちも、驚くほどに僕たちの目的に適った動きをしてくれましたね。

まるでそのシーンの意味を本当に理解しているかのような動きでした。

 動物たちも、求められていることは何となく分かっているのだと思います。
 例えば、颯太が花子を伴って柴崎家を訪ねたシーンでの花子は本当に自分の役割を完璧に把握しているかのような動きをしてくれました。颯太が柴崎(演・中川大志)に呼びかけている隙間を、すきをついて階段を駆け上がり、扉を押し開けて室内に入り柴崎に遭遇する姿は見ていて驚きでした。それを何度もやるのでなく、一発で決めてくれる。そんなセンスまで持っているのです。是非、劇場でご確認いただきたいシーンのひとつですね。

コロナ禍になってから、映画館や劇場は営業規制を受けることが増えました。映画を生業とする篠原監督ご自身、悩みや葛藤などはありましたか?

 僕は、映画は映画館で観るものだ、と思っているんです。映画館がなくなってしまったら、それは僕にとって人生における大きな居場所を失うようなもの。だからこそ、僕自身も行けるときはなるべく映画館へ足を運んでいます。
 今はようやく営業が再開されましたが、5月末まで都内の大手映画館は休業要請を受けていました。正直、現場へ行くたびに思いましたね。「これほど衛生面にきちんと配慮した場所を、さほど検証もせず“杓子定規的”に閉鎖してしまうのは果たして正しいことなのか」と。一度決めたことに対して、頑なに疑わず進めていくことがあまりにも多い。もう少し、見直す姿勢を持ってもいいんじゃないかなぁって。

映画の制作期間中はハードスケジュールで動くことも多いかと思いますが、日ごろの体調管理はどのように?

 睡眠時間は十分とるようにして、朝起きたら毎日欠かさずストレッチ。太りやすい体質なので、週に1~2日は必ず休肝日を設けたり、駅では必ず階段を使ったりと出来ることはやっています。時間があればウォーキングも習慣にしたいですね。歩きながら外の風景を観察していると色々な気づきがあるじゃないですか。地面に咲く花の存在だったり、新しくできた建物だったり。そういったものに敏感でいることは、創作活動にも良い影響を与えるんです。

キャリアを重ねる中で、創作活動における変化はありますか。

 気がついたらもう30年以上も映画監督の仕事をやっているわけですが、最近特に思うのは、自分より若い人に敬意を払うことの大切さです。僕が30~40代のころ、自分より一回り年齢が下の人は、とにかく未熟に見えていました。でも今は、若い世代の人たちが斬新な発想で作品を作ったり、物事と対峙している姿を見て、年配の自分が学ばなくてはいけないことがたくさんあることに気づかされます。
 「若い人は未熟だ」なんて考えこそ本当は一番愚かなもので。自分にない新鮮さを持っているのだと、そう捉えることが大事なのではないかと思っています。

先輩風を吹かさない、ということでしょうか。

 そういうのも、ときには必要ですけどね(笑)。僕は映画学校の講師も務めているので、経験がある分だけ人に指示したり教えたりする機会はあります。ただ一方で、無鉄砲に思い切った意見を述べられることもある。大切なのは、そういった人を否定するのではなくて、尊重するということです。「自分が同じ年齢のとき、彼と同じような熱量を持てていただろうか?」と、自分を省みることですね。

最後に、篠原監督が理想とする年齢の重ね方を教えてください。

 できるだけ色々なものに対して柔軟でいようと思っているのですが、歳をとるとどこかこだわりが出てくるというか、頑固になっていくのでしょうね。それはきっと、自然と人に対する姿勢に表れてくると思うんです。だから、まずは何事も広く受け入れる姿勢でいること。受容と享受です。
 違う価値観を持った人に対してできるだけ心を開くことで、自分にも刺激を与えられるように。そう心がけていきたいですね。



映画『犬部!』


7月22日(木・祝)全国ロードショー
【出演】林 遣都 中川大志
    大原櫻子 浅香航大 田辺桃子 安藤玉恵 しゅはまはるみ 坂東龍汰
    田中麗奈 酒向 芳 螢 雪次朗 岩松 了
【監督】篠原哲雄
【脚本】山田あかね
【原案】片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
【主題歌】「ライフスコール」Novelbright(UNIVERSAL SIGMA/ZEST)
【配給】KADOKAWA

【公式サイト】http://inubu-movie.jp

©2021『犬部!』製作委員会