~林家たい平さんプロフィール~
1964年生まれ、埼玉県出身。「たい平ワールド」と呼ばれる楽しさ満点の高座が高い評価を得ており、NHKの新人賞を始め若手落語家の賞を総ナメにした。真打昇進後も「たい平落語」のさらなる飛躍をめざし、日本テレビ系『笑点』をはじめ数多くのテレビやラジオ、自らの独演会や全国での落語会など幅広く活動している。映画出演作に『もういちど』(2014)、『おくれ咲き』(2018)がある。
映画『でくの空』~あらすじ~
電気工事店を営んでいた周介(林家たい平)は、長年コンビを組んでいた従業員の工事中の事故死によって店をたたみ、父・啓吉(林家ぺー)の元に身を寄せる。事故の真相を秘めたまま、死んだ従業員の母・冴月(結城美栄子)の世話を焼くが、冴月は凛として打ち解けない。失業し、姉の活美(熊谷真実)が営むよろず代行屋に拾われたことから、周介は便利な世の中のスキマに湧くさまざまな困りごとの中に投げ込まれる。心の痛手に苦しみ、助けを必要とする人々に活を入れられながら、次第に周介は立ち直りの兆しを見せはじめる。そして冴月の息子の代わりのつもりがいつしか…
部下を亡くした男性の「再生」を描く今作品。たい平さんが思う作品の見どころと、役どころを教えてください。
少し前に話題になった映画『トップガン マーヴェリック』(トム・クルーズ出演)と、驚くほどテーマが一緒だと思いましたね。トップガンも身近な人の死をテーマにしていて。制作費は雲泥の差がありますけど(笑)。
僕が演じる役は、部下の死を心のどこかで「自分のせい」ではないかと、拭いきれない想いを引きずりながら生きています。家族や部下の母親、周りの人間の温かさに触れて絡まった糸がほどけていくのですが、こういった想いを抱えながら生きている人はたくさんいらっしゃると思っていて。例えば震災や自然災害ですね。「あのときこうしておけば良かった。」そんな想いを抱えながら生きている人に対して、どういう風に寄り添っていけばよいのだろう。そんなヒントを『でくの空』を通して見つけていただければと思います。
映画の舞台は、埼玉県の寄居町やたい平さんが観光大使を務められている秩父市。どんな魅力があるところでしょうか。
都会から近いのにすごく素朴で、訪れた人が故郷を感じる。そんな癒やしを与えてくれる場所だと思います。
この夏、訪れるのにおすすめのスポットはありますか。
秩父の長瀞(ながとろ)という景勝地はライン下りができますし、かき氷で有名なお店もありますよ。最近はキャンプ場も充実していて、とてもにぎわいを見せています。美味しいものも秩父と寄居町にはたくさんあります。恋人同士で来ると、今度は家族になって来ようねと思えるのが県北の地のよいところだと思います。圧倒的な大自然と川、素朴な街並みをぜひ体感していただけばと思います。
秩父には「たい平美術館」も開館を控えていると。こちらも訪問マストのスポットですね!
はい(笑)。絶賛準備中なのですが、コロナ禍なので運営自体についても模索中です。7月末から8月にはオープンの予定です。僕が描いた絵とか、『笑点』でいただいた座布団や思い出の品々を用意しています。こういった展示も、東京のデパートでやったりしているんですけど、なかなか地方では機会がなくて。僕の故郷といった点も含めて、ぜひ来てもらえるとうれしいです。故郷の役に立てればという想いで、開館準備中です。
ご自身のミュージアムを企画されるなど、美大出身ならではの感性をお持ちのたい平さんですが、美大から落語家を目指そうと思ったきっかけとは?
武蔵野美術大学ではデザインを学び、デザインは人を幸せにするためにある、そんなことを考えながら3回生のときに落語に出会いました。ラジオで聞いた落語に感銘を受けて、心がとても晴れやかになったんです。そこから、自分は落語で人の心を明るく変えていく、それもデザインだ! と気が付いて、一気に落語家になりたいという想いが募りました。
普段からもイラストを描かれたり、最近では動画配信も始められたとか。活動の場を広げていらっしゃいますが、元気に過ごすための秘訣はありますか。
まずは「食べ過ぎない」ことですね。食べることが好きなので、ついつい食べ過ぎそうになるんですけど、腹5分目を目標としています。睡眠の質も意識しています。22時くらいに寝れるときは寝て、5時か6時には起きるようにしています。お天道様と一緒の生活をするイメージかな。
運動も大切。6年前、『24時間テレビ』でチャリティーマラソンを走ってから、走ることの楽しさに気づいて今でも走ったりしています。歩くことも欠かせないですね。一駅分歩くとか。歩いていると美しいものが目に留まったり、空を見上げたり、心の健康にもつながっている気がします。
『笑点』にご出演されているメンバーで、健康のお話とかはしますか。
健康について「これするといいよ」といった話はしないですね。健康のことばかり話していると、逆に僕は不健康になってしまうと思います。「あれがいい、これがいい」で結局がんじがらめになるというか。『笑点』みたいに、馬鹿な話をしながらたくさん笑って、「この場にずっといたい」という気持ちが健康につながるんじゃないかと思いますね。
たい平さんは現在57歳ですが、今後どのように歳を重ねていきたいですか。
先輩に「50を過ぎてから人生楽しいぞ」と言われたので、50代以降を精一杯に楽しもうと思っています。今までやってきたことの中で今後も時間を消費する、のではなくて、新たなことに挑戦していきたいですね。一つのことが長続きしなくても、それにしがみつくんじゃなくて、また新たなものを探したい。そうすると生涯をかけての趣味が見つかったり、友達が見つかったり、色んな出会いがあると思うんです。それが自分の人生をより豊かにしてくれる。自分でも知らなかった可能性を見つけるために、これからもたくさんのことに挑戦したいです。
自分のやりたいことに加え、周りの人から「これやって」と頼まれることも僕にとってはとてもありがたくて。頼んでくれた人を介して、新しい世界を見させてもらえますから。
でもそれは最終的に「落語」っていう僕の大きな幹にかえってくると思っています。そのためにたくさん葉を広げて枝を伸ばさないと、日の光は受けられないし、そこから栄養は摂れないから。林家たい平っていう一本の木に栄養を与えるために、どんなことにも挑戦していきたいですね。
落語を聞いたことがないという読者のみなさんに向けて、落語を楽しむためのポイントはありますか。
最初の内は、名前を知っていたりテレビで見たことのある人の落語を見に行った方がよいですね。そういう人を実際に見ると「あ~やっぱり面白い」と思ってもらえるはずです。落語は難しいことは一つも無いので、知識も予習もいりません。ただ日本語が分かればよいので、そのひとときは何もかも忘れて笑って帰ってくる。それが落語の魅力だと思います。
ありがとうございました。それでは最後になぞかけを一つお願いしたいのですが…
お! 急ですね~! (笑)いいですよ。
「健康」とかけまして…?
健康…健康…、だいぶ定義が広いですね!(笑)
健康とかけて、「空手の達人」と説きます。
そのこころは?
板割り(労り)ましょう。
正拳で板を割るのと、体を労わる。すごい!!ありがとうございました!
あんまりうまいことできなかった(笑)
7月29日(金)よりユナイテッド・シネマ ウニクス秩父、
8月12日(金)よりユナイテッド・シネマ ウニクス上里、
8月26日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
【出演】林家たい平 結城美栄子 熊谷真実 林家ペー 池田愛
【脚本・監督・編集】島春迦
【製作】チョコレートボックス合同会社 【配給】アルミード
【公式サイト】dekunosora.jimdofree.com
【Twitter】@dekunosora