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音楽評論家・作詞家 湯川れい子さんインタビュー(2018年6月25日掲載)

女性初の音楽評論家・DJとして、国内外の音楽シーンを紹介し続けてきた湯川さん。作詞家として多くのヒット曲を手掛けるとともに、「幸福へのパラダイム」で日本文芸大賞ノンフィクション賞を受賞するなど、執筆活動でもご活躍されています。
今回は音楽とともに時代を駆け抜けた数々のエピソードと、健康の秘訣についてお話を伺いました。


撮影/安友康博

Reiko Yukawa
ゆかわ れいこ/1936年1月22日生まれ。東京都出身。
1960年、「スイングジャーナル」誌への投稿が大きな反響を呼んだことをきっかけに、インタビュアーならびにジャズ評論家として執筆開始。
1972年からはラジオ日本の「全米TOP40」をはじめとするラジオDJとして活躍。
作詞家としても「ランナウェイ」「恋に落ちて」など多数のヒット曲を手がける。
著書の「幸福へのパラダイム」はベストセラーとなり第10回日本文芸大賞ノンフィクション賞を受賞。

女性初の音楽評論家・DJとして、国内外の音楽シーンを紹介し続けてきた湯川さん。作詞家として多くのヒット曲を手掛けるとともに、「幸福へのパラダイム」で日本文芸大賞ノンフィクション賞を受賞するなど、執筆活動でもご活躍されています。今回は音楽とともに時代を駆け抜けた数々のエピソードと、健康の秘訣についてお話を伺いました。

日本初の女性音楽評論家・DJとしてご活躍されてきました。

いえ、世界初です(笑)。私が初めてアメリカに行ったのが東京オリンピックの年で、その時に向こうの女性DJに話を聞いたら、当時はアメリカでも「女性は天気予報を言っても信頼されない」って。だからアメリカにも女性のDJはいなかったそうです。

まさに時代の先駆けですね。

やっぱり女だったっていうのは、大きかったと思います。「へー女でもできるんだ」って(笑)。同世代の若い人のなかではジャズも先駆けて聴いていたので、そんなことを語ったり書いたりできるのも珍しかったんだと思います。

海外のスターとも交友を深められ、中でもエルヴィス・プレスリーには結婚の証人になってもらったそうですね。

当時付き合ってた彼がエルヴィスのファンで「エルヴィスに会わせてくれたら結婚してもいい」って言われたんです(笑)。最初は「結婚式に出席してください」って手紙を出しましたが断られました。じゃあどうしようと考えて、口実のために当時ヒットした彼のレコードのゴールドディスクを作って、「賞を贈呈するので会わせてください」ともう一度手紙を出したんです。そうしたら「喜んでお受けします。ついては婚約者の方もお連れ下さい」って! 向こうもこっちの魂胆を分かってたのね(笑)。

湯川さんにとって、エルヴィス・プレスリーの魅力はどんなようなところにありますか?

前から見ても後ろからみても本当にオーラがありましたし、とっても眩しい人ですけど、私が魅力を感じるのは、彼の人間的・音楽的な背景ですね。エルヴィスは土地も持たない貧しい農家から生まれたんですけど、素晴らしい歌唱力や絶対音感を持っていた。いわば突然変異のような人で、日本で言うなら、お魚屋さんの娘として誕生し、昭和の歌姫になった「美空ひばり」さん。さらに、エルヴィスはルックスや歌声だけでなく、黒人の教会音楽というものを血や肉、心の中にまで染みこませて、アメリカで初めて黒人音楽と
白人音楽と合体させ、文化を創り出したんです。彼の音楽には「アメリカ音楽の歴史」が広大に広がっているんです。

作詞家として活動される「きっかけ」はどのようなものだったのでしょうか?

 私のラジオ番組で「ディス・ウィークスNo.1!」なんて言ってくれていたエミーっていうアシスタントの女の子がいたんですけど、その人がものすごく歌が上手くて、レコードを出すことになったんです。ある日曜日に番組のディレクターから府中の米軍ハウスまで呼び出されて、そこに作曲家の方がいらして「ちょっとこのメロディーに英語の詞をつけてよ」って突然頼まれて(笑)。ビックリして「今ここでですか?」って聞いたら「そう、ここで書いてみて」って。その場で簡単な英語詞を書いて帰ってきたら、その詞が「エミー・ジャクソン」としてアシスタントの子が歌手デビューするデビュー曲「涙の太陽」になったんです。

その後も「ランナウェイ」など数多くのヒット曲を手がけられました。

もともとラジカセのCMソングだったのですが、作曲をしたブルーコメッツの井上忠男さんから「アメリカのドゥーワップが好きな連中が歌うので、アメリカの匂いが欲しい。作詞は湯川さんしかいない」と声をかけていただきました。CMが始まったらすごい評判で、「シャネルズのデビュー曲にする」って。本当にいろんな偶然が重なりましたね。

平成元年にご自身の経験で感じた音楽のパワーについて書かれた『幸福へのパラダイム』がベストセラーとなりました。30年の時を経て、今年3月に再編集された新刊が発売されています。

音楽って目に見えないし、手で掴めない。歌詞やメロディーなどもありますけど、そんな理屈抜きに音楽が鳴ったら踊っちゃう(笑)。私はその中にはエネルギーがあって、それを心と体で感じてるんだって思うんです。出会いもそう。目に見えないものは、見えるもの以上にパワーを持っているんです。

現在も非常にご多忙で「お休みがない」と伺いました。

だいたい寝るのが夜中の3時です。コンサートやレコーディングで家に帰るのが夜の10時。それからその日のうちに書かなきゃいけない原稿に手をつけて、お風呂に入って2時にはベッドの中で寝ようと思うけど、1時間くらいツイッターにハマっちゃうの(笑)。

健康のためにしていることはありますか?

この仕事は座ることが多くて、運動不足になるんです。だからシャワーの下で毎日600歩ほど足踏みをしています。私は「ランニング」っていっているんですけどね(笑)。

運動以外に気をつけていることはありますか?

睡眠ですね。21歳の時にC型肝炎を発症しました。ランナウェイがヒットした時は一番忙しくて、睡眠不足になっては高熱が出てしまって…。その時にお医者様から言われたのが、「どんな名医も妙薬も、睡眠不足にだけは敵いませんからね」「ベッドの中に8時間は必ずいてください」ということ。だから今もどんなに忙しくても、8時間は眠るようにしています。

眠れない時もあると思いますが、何か対策法はありますか?

ストレスや気分が落ち込んで眠れない時は「音楽」が良いですよ。悲しい時は悲しい音楽を聞いて思いっきり泣く。そのあとに自分が聞いて楽しくなる音楽をかけると、気持ちがスッキリとしますから。

とても若々しい湯川さんですが、その他に何か健康のためにしていることはありますか?

今も欠かさずにしているのが「呼吸法」です。世界中を歩いて分かったんですが、健康に良いっていうヨガも太極拳も武道も踊りも、全部に共通するのは「呼吸」のやり方なんですね。そこで「健康には呼吸が大切なんだ」って気付かされて。今から、私がやっている呼吸法をお教えしますね。まずは、秒針の付いた置時計を準備してください。それを見ながら、ベッドの角でも椅子でもどこでも良いので、背筋を伸ばして鼻から息を「スーッ」っと吸う。そして、その息を口から「フーーーーーーーー」って細く・長く吐いていくんです。秒針を見ながら、だいたい15秒くらいかけて吐いて、馴れたら30秒まで頑張る。吐き方はできるだけ細~く長~く、「長い息(長生き)をする」って考えながら(笑)。この呼吸法を1日5セットくらいやると、大体の不具合は解消できると思います。テレビを見ながらでも、夜寝る前でも、ご自分の好きな時間にできるので、ぜひやってみてください。

温泉が好きとお伺いしたのですが、それも健康の秘訣でしょうか。

C型肝炎になったときもそうなんですけど、やっぱり「体を温める」ってすごく大事なんですね。体温を上げておかないと、いろんな病気にかかりやすくなるって言われますよね。でも歳をとると、どんどん体温は低くなってしまう。そこで良いのが温泉。体の芯から温めることができるので、本当に健康に役立つと思います。

湯川さんにとって健康とは。

60歳の時に病気を克服して「幸せの法則・あいうえお」というのを自分で作りました。(あ)会いたい人に会いたい(い)行きたい所に行きたい(う)嬉しいことがしたい(え)選ばせてもらいたい(お)美味しいものが食べたい。エルヴィスに会えたのもそうですけど、想いが強いとそれがエネルギーになって本当に実現するんです。想いは、本当に大きな原動力です。


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