だんた やすのり/1957年1月24日生まれ。京都市出身。
1981年、野田秀樹主宰の劇団「夢の遊眠社」へ入団し、1992年の劇団解散まで主力俳優として活躍する。舞台のみならず、テレビドラマなど映像分野でも活躍中。コメディからシリアスまで、幅広い役柄を巧みにこなす。取材時は東京・新橋演舞場にて「有頂天一座」に出演中。4月からは、装いをガラッと変え、ノルウェーが舞台の翻訳劇『ヘッダ・ガブラー』に出演する。
還暦を迎えられてなお、多方面で大活躍されています。
4月からの舞台『ヘッダ・ガブラー』では、物語のカギを握る人物を演じる段田さんに、ご自身の健康についてのお話を伺いました。
今度の舞台『ヘッダ・ガブラー』の内容を教えてください。
「人形の家」で有名なイプセンの作品です。1890年の作品ですから、130年前くらいに書かれたものです。
ヘッダというのは、主人公の女性の名前で、その当時「奔放な生き方をした女性」と話題になったそうです。そのヘッダをめぐって、旦那さんをはじめ、3人の男たちが振り回され、渦に巻き込まれていく――。そういった人間模様を描いたお話です。
満たされているはずなのに、心にぽっかり穴が開いたように感じる…。ヘッダは、そういう悶々とした悩みを抱えた女性ですよね。
そうですね。ヘッダはその悩みに耐えかねて、旦那さん以外の男性の気を引いてみたり、周りの人たちが夢を追うのを邪魔したりと、色々突飛な行動をとります。
その姿は、書かれた当時は衝撃だったようですが、現代でも、ヘッダと同じような悩みを持っている女性は多いかもしれませんね。
「#Me Too」運動が注目されていますし、女の人は家庭にいて旦那が稼いでくるという役割分担の図式も、まだまだ残っていますよね。だから『ヘッダ・ガブラー』で描かれていることは、今の日本でも通じることがたくさんあるんではないかなと感じています。
男から見たら、「男だって大変だよ」なんて思うところもありますが(笑)、視点が違うと感じ方も多様で面白いと思います。女性にご覧いただいたら、「分かるなぁ、昔から変わらないんだなぁ」と共通点を見つけていただけると思います。
段田さんの役どころは?
わたしはブラック判事という、物語のカギを握る人物を演じます。ヘッダに気があるんでしょうけど…なんだろう、ヘッダの磁場に引き寄せられているような人物だな、と思います。
役作りはどのようにされるのですか?
“こういう人物だ”って最初に決めることは、あまりしません。本を読んで、みんなと一緒にやっていくうちに、「あ、こういう人物かな」「こういう喋り方、歩き方をするのか」といったふうに、段々と掴んでいきます。
もちろん、最初に台本を読んだ時の印象は大事なんですけどね。「面白い」とか「つまんない」とか「出るんじゃなかった」とか、何でもいいんですけど(笑)
相手によっても変わりますしね。何度かご一緒したことのある役者さんと向き合うときは、「こうくるだろうなぁ」というのが大体分かります。でも初めての方の場合は、実際にやってみて初めて「あ、こういうやり方なのか」と分かるわけです。それを感じるのも楽しいです。
今年はご自身最多、年間5本の舞台にご出演ということですが。
「これどう?」「やります」と言っているうちに、5本はまっちゃったんですよ。それだけ話を頂戴するのは有難いですけどね。「はいやります」「やります」って言ってるうちに、こうなっちゃった(笑)
この歳で年間5本というのは、なかなか厳しい部分もありますが、でもこの仕事が好きですから。
人前に出て、こういう格好して何かやるっていうのは楽しいんです。気持ちとしては、20代で演劇を始めた頃とそんなに変わっていません。好きだからやりたいし、モチベーションを保つのも苦ではないです。それでご飯食べてるんですから、有難いことですよ。
昨年還暦を迎えられました。最近気をつけていることは?
やっぱり体は大事ですね。昔、劇団で飛んだり走ったりしていたせいか(笑)、膝が少し悪いので、最近は特に気をつけてます。元気で普通に歩けて普通に台詞が喋れれば、それが一番。少々芝居で失敗しようがどうってことないですよ(笑)
かといって毎日こつこつトレーニングを積むとか、そういうの全然ダメなほうで。毎朝オレンジジュースを飲むとかヨーグルトを食べるとか、そんな程度かなぁ。
あと納豆ですね。西の者なのであまり食べなかったんですが、以前、尊敬する俳優さんで納豆がとてもお好きな方がいて、「納豆がいいぞ。ぼくは朝昼晩納豆だ」っておっしゃってたのに影響されて、最近は毎朝納豆を食べるようにしてます。ちっちゃめの、粒が固めのが好き。大きくて柔らかいのはちょっとダメ。ひきわりもダメ。こだわりがあるんです(笑)
毎朝オレンジジュースを?
もともと好きなことは好きなんですけど、血液がサラサラになるってテレビで聞いたような気がしましてね。
大体、昔からのことは理にかなってるんじゃないかと思うんです。日本食なら朝に納豆を食べるし、西洋ならオレンジジュースが付いてくるじゃないですか。だから「そういうもんかなぁ」と思って。
若い頃はお金もないですからね。野菜を食べようと言われても、面倒くさいし高いし、とりあえず腹が膨れればいいや、みたいな状態でした。でも40歳前後から、「あれっ?」って。どこかしら心配になってくる。それでようやく、健康に意識が向くようになりました。
ほかに、お食事で気にされていることはありますか?
あとは肉ですね。「年取ったほうが肉を食べたほうがいい」って、最近言われてるでしょ?それを気にしまして。食事の量は減ってるんですけど、肉をなるべく食べるようにしています。
寝る時間は決めていますか?
7時間は寝たいなと思うんですが、仕事によりますね。
気が小さいんで、「やばい、今からだと何時間しか寝られない」なんて考えてしまうんですよ。昔、兄貴に、「ちょっとくらい寝不足でも大丈夫だからいちいち数えるな」と言われたんですが、いまだに寝る前に「えーっと今からだと、あぁ6時間かぁ」と数えるクセが抜けません(笑)
そうそう、この間初めて、睡眠導入剤を買いました。生まれてこの方飲んだことなかったんですが、撮影が早い時に使おうと思って。でもなんか怖いんですよね。結局、2錠飲むところを怖いんで1錠(笑) 気持ちの問題か、すっと寝られました。まだいっぱい残ってますから、いよいよの時はまた飲もうかと(笑)
運動はいかがでしょう?
歩くのも大事だと分かってはいても、歩かないんだよなぁ。駅までの5分が面倒で。
ゴルフ場で歩いてるぶんにはどうってことないんですけどね。何か楽しいことがあればいいけど、ちょっとそこまでタバコ買いに行くとか、コンビニなんてすぐそばなのに、それでも自転車乗っちゃう(笑)
膝のためにも筋肉を鍛えてくださいって医者に言われるんですけどね。
今出ている舞台は割と立ったり座ったりがあるんで、これで運動はOKってことにしてます(笑)
今まで健康で過ごしてこられた秘訣は何だと思いますか?
健康ばっかりは、生まれ持ってのものと生活習慣でしょうね。健康に気を遣って規則正しく、みたいな意識はなかったけど、それでここまでこられたので。
生まれてきた状態が、健康でいられる状態だったんだと思います。母に感謝ですね。
段田さんにとって健康とは?
今一番大事なものです。自分にとっても、周りの人にとっても。お金があろうが貧乏であろうが、病気は襲いかかってきますからね。
身体も心もですが、健康であればどうにでもなると言いますか、何とか生きていける。死ぬまで健康で過ごせて、人に迷惑をかけない程度に、仕事でも趣味でも自分の好きなことができて、それでポテッて死ねたら一番いいなと思います。
今後の目標を教えてください。
「あと何本、死ぬまでに芝居できるのかな」ってふと考える時があるんです。例えば70だとしたってあと10年ないので、年間3本やって30本くらいかなとか。もう父親が死んだ歳を越してるんで、明日死んだっておかしくないという感覚もどこかある。
そうすると、残りの舞台の本数は無尽蔵にはないってことに気づいて、自分がやりたい、いいなと思える舞台を、一本一本ちゃんとやろうという気持ちが芽生えてきます。「ちゃんと仕事したな」と思えるように、努めなければと。
プライベートでは……、周りの大切な人たちが健康でいてくれるのが一番かな。猫を飼ってるんですけど、その猫も、健康でいてくれよって。それが一番の望みですね。
元気の輪をご覧の方にメッセージをお願いします。
「わはは」って笑ってたらがんもなくなる、なんて言うでしょう。心の作用ってやっぱりあると思うんです。「だめだぁ~」と内にこもってどんどん落ち込んでいくよりも、「なんとかなる」って朗らかに生きていこうとする、その精神は大事ですよね。
「どうせだったら気持ちを明るく生きる」というのが健康法かな。自分にもそう言い聞かせています。
元気な方はお元気で、一緒に頑張っていきましょう。ちょっと具合が悪い方は、心を明るく、なんとか負けずに過ごしてくださいね。
作:ヘンリック・イプセン
演出:栗山民也
翻訳:徐 賀世子
出演:寺島しのぶ、小日向文世、池田成志、水野美紀、段田安則 他
東京公演
2018年4月7日(土)~30日(月・休)
Bunkamuraシアターコクーン
お問合せ:シス・カンパニー
03-5423-5906
料金:S席¥9,000 A席¥7,000 コクーンシート¥5,000(税込・全席指定)
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